コラム

なぜ産油国はトランプの方針に「乗った」のか...原油価格を大きく動かした「狙い」とは?

2025年06月19日(木)11時24分
産油国の方針転換で原油価格が下落

HAMAD I MOHAMMEDーREUTERS

<22年には1バレル=120ドルを突破していた原油価格が下落した要因は、ウクライナ情勢などの政治情勢の変化だけでなく、産油国の増産という方針の転換にある>

このところ原油価格の下落が顕著となっている。直接的な原因は、ロシアのウクライナ侵攻に解決の見通しが出てきたことだが、その背後には、米トランプ政権との交渉を通じて、国際社会での振る舞いを有利に進めたいという産油国の思惑がある。

2021年以降、1バレル当たり40ドル台だった原油価格は一気に上昇し、22年には120ドルを突破する状況まで価格高騰が進んだ。直接的な要因はコロナ危機の発生に伴う全世界的なインフレ傾向や、ロシアによるウクライナ侵攻だが、原油価格をあえて高く推移させたいと考える産油国の思惑も大きく関係していた。


サウジアラビアやロシアなど主要産油国は、いずれ石油は再生可能エネルギーなどに取って代わられ、需要が大幅に減ると予想している。石油を高く売れるうちに高く売っておきたいとの意向があり、産油国は受給が逼迫した状態でもあえて減産を進め、価格を高めに誘導してきたと言っても過言ではない。

特にロシアの場合、国家収入の多くを原油販売に依存していることもあり、戦争継続には原油価格を高く維持する必要があった。その後、原油価格は少し落ち着きを取り戻し、80ドル前後の展開が続いていたが、一時は60ドルを割り込む水準まで下落していた。

プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米テキサス州洪水の死者100人超える、行方不明者1

ワールド

トランプ氏、ウクライナへの防衛兵器追加供与承認 対

ビジネス

スナク前英首相、ゴールドマンに復帰 シニアアドバイ

ワールド

イラン外相がサウジ皇太子と会談、イスラエルとの戦闘
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 2
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 3
    「ヒラリーに似すぎ」なトランプ像...ディズニー・ワールドの大統領人形が遂に「作り直し」に、比較写真にSNS爆笑
  • 4
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 5
    犯罪者に狙われる家の「共通点」とは? 広域強盗事…
  • 6
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、…
  • 7
    自由都市・香港から抗議の声が消えた...入港した中国…
  • 8
    トランプ、日本に25%の関税...交渉期限は8月1日まで…
  • 9
    「けしからん」の応酬が参政党躍進の主因に? 既成…
  • 10
    人種から体型、言語まで...実は『ハリー・ポッター』…
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 3
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸せ映像に「それどころじゃない光景」が映り込んでしまう
  • 4
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 5
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 6
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 7
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 8
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 9
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 10
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 4
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 5
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 6
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 7
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 8
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story