コラム

習近平、生き残りを懸けた2つの政治ゲーム

2015年11月25日(水)17時00分
習近平、生き残りを懸けた2つの政治ゲーム

抗日戦勝70周年記念の軍事パレードに臨み、江沢民元国家主席(中央)に話しかける習近平 Wang Zhao-REUTERS

「リエンジニアリングCHINA」と題する本コラムは、中国政治を理解すること、すなわち政治権力を中心としてみた現代中国を描いてゆく。

 中国政治を理解しようとするとき、私たちは有力な二つの分析の視点のいずれかを選択することになる。いや、選択をする必要はないかもしれない。少なくとも私たちがしておくべき事は、両者の相違を明確にしておくことだろう。

 ここでいう二つの分析の視点とは、一つは中央レベルの政治、政治権力を中心に中国政治を理解するということである。中央とは、中国共産党であり、中国共産党とそれが包摂している国家機関による統治の体制、つまり党国体制のことである。いま一つの分析の視点とは、そうした一握りの権力者のサークル内の政治よりも、権力の外側にある民衆の方に焦点をあてて理解することである。

 もちろん、いずれもが現代中国政治を理解するうえで有効な分析の視点である。しかし現代の中国政治の特徴を考えたとき、それを理解するうえでより有力な視点は中央レベルの政治を中心としたものではないか、と私は考える。

中国共産党が圧倒的な力を持ち続けられたのはなぜか

 なぜなら、中国共産党は国家の構成員に対して圧倒的な力を独占しているからである。例えば中国共産党は、これまで一貫して「党の指導」が現代中国における最も根本的な政治原則であることを繰り返し確認し、それだけでなく、現実にそれを徹底させることに成功してきた。

 もちろん中国共産党による統治は、これまでいくつかの危機を経験してきた。その近年における最大のものは1989年6月の天安門事件であった。中国共産党は、この危機を力で克服し、それ以来、四半世紀にわたって、社会からの「政治原則」に対する挑戦を未然に押さえ込み、その政治的な支配を持続させてきたのである。

 これまでのところ、私たちは中国社会に中国共産党に挑戦する能力を有する政治的集団の存在を見出すことはできない。中国共産党はあらゆる手段を講じて、自らにチャレンジする勢力の萌芽を摘むことに成功しているからである。

 もちろん、支配を持続させるために中国共産党は膨大なコストを払い続けていること、またそのコストは年々高まっていることは、現在の支配体制の行方に様々な懸念材料を提起する。しかし、その支配の実態を理解しようとする際に重要であるのは、「払い続けることができている」という実績である。持続力は中国共産党が圧倒的に強大な力を掌握していなければ発揮し得ない。中国共産党に取って代わることができるような支配の能力を持ち、支配の経験がある政治的集団は、いまの中国社会には見当たらない。

プロフィール

加茂具樹

慶應義塾大学 総合政策学部教授
1972年生まれ。博士(政策・メディア)。専門は現代中国政治、比較政治学。2015年より現職。国際大学グローバル・コミュニケーション・センター客員研究員を兼任。國立台湾師範大学政治学研究所訪問研究員、カリフォルニア大学バークレー校東アジア研究所中国研究センター訪問研究員、國立政治大学国際事務学院客員准教授を歴任。著書に『現代中国政治と人民代表大会』(単著、慶應義塾大学出版会)、『党国体制の現在―変容する社会と中国共産党の適応』(編著、慶應義塾大学出版会)、『中国 改革開放への転換: 「一九七八年」を越えて』(編著、慶應義塾大学出版会)、『北京コンセンサス:中国流が世界を動かす?』(共訳、岩波書店)ほか。

ニュース速報

ワールド

台湾中銀、政策金利を予想通り引き下げ 英離脱の通商

ビジネス

第1四半期の英経常赤字は過去最大水準、GDP確報変

ワールド

予算拠出などの妥協でEU単一市場にアクセス可能=英

ワールド

ジョンソン前ロンドン市長、英保守党党首選への不出馬

MAGAZINE

特集:BREXITの衝撃

2016-7・ 4号(6/28発売)

世界を揺るがせたイギリス国民投票のEU離脱派勝利。リーマン危機級のパニックが再びグローバル経済を襲うのか

人気ランキング (ジャンル別)

  • 最新記事
  • コラム
  • ニュース速報
  1. 1

    もし第3次世界大戦が起こったら

  2. 2

    英キャメロン首相「EU離脱派6つのウソ」

  3. 3

    ハーバードが絶賛する「日本」を私たちはまだ知らない

  4. 4

    ISISが3500人のNY「市民殺害リスト」をアプリで公開

    無差別の市民を選び出し、身近な標的を殺せと支持…

  5. 5

    財政赤字を本気で削減するとこうなる、弱者切り捨ての凄まじさ

  6. 6

    未婚男性の「不幸」感が突出して高い日本社会

  7. 7

    「国家崩壊」寸前、ベネズエラ国民を苦しめる社会主義の失敗

  8. 8

    コンビニATM14億円不正引き出し、管理甘い日本が狙われる

    アフリカ諸国、東欧、中東などでは不正分析ソフト…

  9. 9

    搾取されるK‐POPのアイドルたち

  10. 10

    Windows10の自動更新プログラム、アフリカのNGOを危険にさらす

  1. 1

    レイプ写真を綿々とシェアするデジタル・ネイティブ世代の闇

    ここ最近、読んでいるだけで、腹の底から怒りと…

  2. 2

    英国のEU離脱問題、ハッピーエンドは幻か

    欧州連合(EU)にさらに権限を委譲すべきだと答え…

  3. 3

    伊勢志摩サミットの「配偶者プログラム」はとにかく最悪

    <日本でサミットなどの国際会議が開催されるたび…

  4. 4

    嫌韓デモの現場で見た日本の底力

    今週のコラムニスト:レジス・アルノー 〔7月…

  5. 5

    間違い電話でわかった借金大国の悲しい現実

    ニューヨークに住み始めた僕は、まず携帯電話を手…

  6. 6

    中古ショップで見える「貧困」の真実

    時々僕は、自分が周りの人々とは違った経済的「…

  7. 7

    移民問題が「タブー」でなくなったわけ

    ここ数年、僕たちイギリスの国民は、一部の政治…

  8. 8

    【市場】いよいよ終わりの始まりが始まった

    いよいよ終わりの始まりが始まった。それは日銀のマ…

  9. 9

    パックンが斬る、トランプ現象の行方【後編、パックン亡命のシナリオ】

    <【前編】はこちら> トランプ人気は否めない。…

  10. 10

    日本で盛り上がる「反知性主義」論争への違和感

    日本で「反知性主義」という言葉が流行している…

  1. 1

    メルセデス・ベンツの長距離EV、10月に発表=ダイムラー

    ドイツの自動車大手ダイムラーは、メルセデス・…

  2. 2

    米フロリダ州の乱射で50人死亡、容疑者は警備最大手に勤務

    米フロリダ州オーランドの、同性愛者が集まるナ…

  3. 3

    英国のEU離脱派と残留派、なお拮抗=最新の世論調査

    11日に公表された世論調査によると、英国の欧…

  4. 4

    英EU離脱は連合王国のリスク、元首相2人が警告

    英元首相のトニー・ブレア氏とジョン・メージャ…

  5. 5

    ECBのマイナス金利、銀行に恩恵=コンスタンシオ副総裁

    欧州中央銀行(ECB)のコンスタンシオ副総裁…

  6. 6

    米国株式市場は続落、原油安と世界経済懸念が重し

    米国株式市場は2日続落で取引を終えた。原油が…

  7. 7

    NY市場サマリー(10日)

    <為替> 原油安や銀行株主導で世界的に株安が…

  8. 8

    インタビュー:世界的な低金利、エンダウメント型投資に勝機=UBSウェルス

    UBSウェルス・マネジメントのグローバルCI…

  9. 9

    焦点:タカタ再建、「ラザード」効果で進展か 車各社との調整に期待

    欠陥エアバッグ部品の大量リコール(回収・無償…

  10. 10

    英国民投票、「EU離脱」選択で何が起こるか

    欧州連合(EU)は6月23日の英国民投票を控…

定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
メールマガジン登録
リクルート
売り切れのないDigital版はこちら

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

0歳からの教育 育児編

絶賛発売中!

コラム

パックン(パトリック・ハーラン)

モハメド・アリ、その「第三の顔」を語ろう