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BBCのジャニー喜多川「性加害」報道が問う、エンタメ界の闇と日本の沈黙
だが一方で、大物映画プロデューサーのハービー・ワインスティーンやロック歌手のゲイリー・グリッター、コメディアンのビル・コズビーのように、刑事裁判にかけられたケースもある。
時には彼らは「公然の秘密」のように振る舞い、自らの性癖をほのめかしたりひけらかしたりしてスリルを味わっているように見えることすらあった。コズビーはたびたび、セックス狙いで女性の飲み物に(催淫性の)薬を入れる話をジョークにしていた。事実、彼はデートレイプ・ドラッグを使っていた。
サビルは何度か、報道陣に「彼女、16歳って言ったんだよ!」と未成年者との行為をジョークにし、「来週には裁判にかけられる」などとふざけて語っていた。彼は自伝の中で、10代の家出少女を翌朝まで警察に返そうとしなかった、と豪語してさえいる。
彼らとは対照的に喜多川は、公の場を完全に避けていたので、そのせいもあって人々の目が虐待行為からそらされたのかもしれない。今やイギリス中で罵倒されるようになったサビルとは違い、喜多川は頻繁にテレビに出るような存在ではなかった。
事件と加害者に混乱した感情を抱く被害者
一般大衆はこれら疑惑の「社会的もみ消し」の主犯ではないものの、完全に責任を免れることもできない。例えばマイケルの音楽を愛するがためにマイケルの犯した事実を受け入れようとしないファンたちは、被害者の語る権利まで否定したことで、良くて妄想的、悪く言うなら悪意の塊と化した。
マイケルの犯罪を知ったことで彼の音楽が「汚された」と考えるかどうかは個人が判断すればいいが、ドイツのミュンヘンにあるように彼の「聖地」めいたものが作られているのにはギョッとさせられる。
被害者の側をついつい非難してしまう、という人間の厄介な傾向もある。ひどい事件を耳にすると、自分には決して起こらないことだと人は皆、考えたがるもの。だからこそ、人々は被害者がしたこと、しなかったことをあげつらおうとする。彼女は抵抗したり叫んだりしなかった。彼は同じ部屋で寝ることを受け入れた。性行為の見返りは名前を売ってもらうことだと理解していた...などだ。
こうして事件を「合理化」して考えようとすることは、明らかな真実を覆い隠してしまう。大人の男が子供に淫行すれば成人側の犯罪である、という事実だ。
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