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わが家の資産価値上昇を僕が喜べない理由
印紙税の増額の方は、ある程度の効果があるかもしれない。裕福な人たちが、別荘として、あるいは(こちらのほうが多いだろうが)投資物件として、数に限りがある住宅を買いあさろうとする気持ちをなえさせる効果はあるだろう。別荘用であれ投資用であれ、どちらも住宅危機の元凶になっている。
だとしても、人々が「貸してもうける」ために家を買うことをやめる保証はない。こういう家主は買ったときのコストを高い家賃で回収しようとする(つまり、いま賃貸住宅に住んでいる人たちは、持ち家を買うための貯金がなかなかできない)。それに、新しい印紙税が適用されるのは来年からだから、第2、第3の家を今すでに所有している人々には関係ない。
僕が住んでいる地域ではこの4年間に住宅価格はだいたい25%上昇した。ロンドンでは50%に近いだろう。自分の家の値段が上がったことで、ちょっぴり安心感をもったことは僕も否定しない。だが、「価値が上がった」からといって、僕の家が広くなったわけでも、素敵になったわけでもない。名目上の価値上昇分に当たるお金を使おうという気にもならない。いつかは住宅価格が下がる日がくるかもしれないからだ(いつかは下がったほうがいいだろう)。
それに、自分の家の価値が上がることは、家を買える望みの薄い多くのイギリス人にとっては途方もない苦しみなのだと思うと、心安らかでいられない。わが家の、限られた価値しかない名目上の「利益」は、彼らにとっては腹立たしくてたまらない現実の損失なのだから。
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