コラム

認知戦で狙われているのは誰なのか?──影響工作の本当の標的

2025年09月03日(水)17時58分

また、私の所属する新領域安全保障研究所と社会調査支援機構チキラボが公開した調査結果( https://inods.co.jp/articles/experts/6971/)でも先の都議選ではファクトチェックをよく見たのはYouTubeだったが、参院選ではテレビに変化し、さらに投票行動への影響がなかったことがわかっている。

さらに参政党の支持者の場合、ファクトチェックの方を否定する傾向があった。

また、「(フェイクとされた)元の情報の発言者が不当に叩かれていると感じ、むしろ支持しようと思った」比率も高い。

ファクトチェックによってむしろ信念が強化された割合も少なくないのだ。

多くの対策はいまだにSNSに焦点を当てているが、メディア、専門家、政治家からナラティブや偽情報(の警告のつもりだが逆に拡散している)が発信され、そこからSNSにも拡散している以上、防ぐのは困難だ。

日本で、この領域の専門家として、さまざまなメディアで発言している研究者はいみじくも、「自分は批判的思考ができている、という自己評価の高い人ほど偽情報を拡散しやすい」と語っていた。ご自身のことを語っていらっしゃった興味深い指摘だと思う。

ただ、このように気づいている人は稀で、FTIとFTSのどちらも自分達が中露に操られやすい脆弱な存在だという認識がないようだ。

FTSにいたっては、自分たちこそが認知戦の最前線で愚かな国民を指導しなければならないとすら考えているだろう。その傲慢さが問題と言える。

ロシアが献上した偽情報というただのぼろきれを着て悦に入っている「裸の王様」だ。

プロフィール

一田和樹

複数のIT企業の経営にたずさわった後、2011年にカナダの永住権を取得しバンクーバーに移住。同時に小説家としてデビュー。リアルに起こり得るサイバー犯罪をテーマにした小説とネット世論操作に関する著作や評論を多数発表している。『原発サイバートラップ』(集英社)『天才ハッカー安部響子と五分間の相棒』(集英社)『フェイクニュース 新しい戦略的戦争兵器』(角川新書)『ネット世論操作とデジタル影響工作』(共著、原書房)など著作多数。X(旧ツイッター)。明治大学サイバーセキュリティ研究所客員研究員。新領域安全保障研究所。

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