ニュース速報
ワールド

アングル:出生地主義見直す米大統領令、最高裁の差し止め範囲制限で広がる混乱

2025年07月01日(火)08時39分

米国で生まれた子どもに自動的に国籍を与える出生地主義を大幅に見直すトランプ大統領の大統領令を巡る連邦最高裁判断が、影響を受ける人々の間で混乱を広げ、弁護士事務所には問い合わせが殺到している。写真は生後3カ月の娘を抱いた、「マルタ」と名乗る原告の女性。6月27日、メリーランド州のCASA多文化センターで撮影(2025年 ロイター/Nathan Howard)

[ワシントン 28日 ロイター] - 米国で生まれた子どもに自動的に国籍を与える出生地主義を大幅に見直すトランプ大統領の大統領令を巡る連邦最高裁判断が、影響を受ける人々の間で混乱を広げ、弁護士事務所には問い合わせが殺到している。

最高裁は27日、この大統領令を全米レベルで一律に差し止めていた州の連邦地裁による仮処分の適用範囲を制限する判断を示した。大統領令に基づくと、米国に不法または一時滞在する母親と、米国籍や永住権を持たない父親の間に生まれた子どもは出生地主義の対象にならず、米国籍が付与されない。

これに対して移民支援団体CASAなどの原告グループが、大統領令は合衆国憲法違反だと主張して提訴。東部メリーランド州など3つの連邦地裁が全米で差し止める仮処分を出していた。

コロンビア出身で米南部テキサス州ヒューストンに住み、難民認定申請中のロレーナさん(24)は、最高裁判断を相次いで伝えるニュースを聞いて、9月に出産予定の自分の娘がどうなるのか詳しく知ろうとしたが、困惑と不安に陥るばかりだった。

ロレーナさんは「説明が少なく、よく理解できない」と打ち明けた。

心配しているのは娘が米国籍を持てなくなる事態。「彼女を私の亡命申請に追加できるのかも分からない。彼女が国籍を持たずに漂う事態になってほしくない」という。

与党共和党が優勢な幾つかの州では、移民支援団体や弁護士に妊娠中の移民やその両親から数多くの電話がかかってきている。

ただ、まだ関連訴訟の行方や、大統領令が州ごとに執行されるのかどうなど不明な様子だらけのため、回答側も説明が難しい。

中西部オハイオ州の支援団体、オハイオ・イミグラント・アライアンスのディレクター、リン・トラモンテ氏は、東アジア系の一時滞在ビザ(査証)を取得し、妻が妊娠中という人から27日に電話があったと明かした上で、この男性は子どもの権利をどうすれば守れるか知りたがり、特にそうした権利が合衆国憲法に含まれるのかどうか非常に関心があると強調し続けたと付け加えた。

複数の移民支援団体は、トランプ氏の大統領令によって米国で年間に生まれる推定15万人の子どもが自動的に国籍を取得できなくなり、その影響は甚大だと指摘する。

移民の権利を提唱する「ユナイテッド・ウィー・ドリーム」の広報担当者は「米国に幾つもの違う種類の権利を持つさまざまな階層の人々を生み出す。本当に混乱する」と訴えた。

最高裁は、原告グループのうちCASAや別の1つのプロジェクトに属するメンバーは、引き続き下級審の差し止め命令対象になるとの見解を示した。

ただ大統領令が執行される可能性がある州の人々が、これらの組織に新規加入できるかどうか、そうした加入資格を連邦や州の当局者が確認する方法は明らかになっていない。

ロイター
Copyright (C) 2025 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

訂正「農業犠牲にせず」と官房長官、トランプ氏コメ発

ワールド

香港の新世界発展、約110億ドルの借り換えを金融機

ワールド

イラン関係ハッカー集団、トランプ氏側近のメール公開

ビジネス

日本製鉄、バイデン前米大統領とCFIUSへの訴訟取
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 2
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とんでもないモノ」に仰天
  • 3
    ワニに襲われ女性が死亡...カヌー転覆後に水中へ引きずり込まれる
  • 4
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 5
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 6
    「パイロットとCAが...」暴露動画が示した「機内での…
  • 7
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 8
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    顧客の経営課題に寄り添う──「経営のプロ」の視点を…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 3
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 4
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 5
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 6
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた…
  • 7
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 8
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 9
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 10
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中