アングル:イラン核施設空爆で謎に包まれる濃縮ウランの実態、IAEA検証困難か

米国とイスラエルによるイラン核施設空爆は、国際原子力機関(IAEA)の査察官にとって極めて困難な事態をもたらした。写真はイランのフォルドゥ地下施設を捉えた衛星写真。6月22日、イランで撮影。MAXAR TECHNOLOGIES提供(2025年 ロイター)
Francois Murphy John Irish
[ウィーン 29日 ロイター] - 米国とイスラエルによるイラン核施設空爆は、国際原子力機関(IAEA)の査察官にとって極めて困難な事態をもたらした。イランが貯蔵していた濃縮ウランが核施設のがれきに埋もれてしまったのか、それとも秘密裏に隠されたのか当面確かめる手立てがなくなったからだ。
トランプ米大統領は、フォルドゥ、ナタンズ、イスファハンの3カ所にあるイランの主要核施設は特殊貫通弾(バンカーバスター)などで完全に破壊されたと主張している。
しかしIAEAの見解では、高濃縮ウランの大半を製造していたフォルドゥの施設がどの程度の損害を受けたのか正確には分かっていない。
IAEAのグロッシ事務局長は、フォルドゥでウラン濃縮に使われていた遠心分離機が重大なダメージを受けた公算は大きいと発言した。だが全体で9トンのうち、核兵器級に近い濃度に高められた400キロ余りのウランがどうなったかは謎に包まれたままだ。
ロイターはイランの核開発抑制の取り組みに現在関与している、あるいは過去に関与した十数人に取材した。空爆によってイランは、貯蔵濃縮ウランの行方をくらませる絶好の機会を得たほか、IAEAによる実態解明には非常に長い時間と多大な労力が必要になりそうだ、との証言を得た。
2005─10年にIAEAの査察責任者で、今は米首都ワシントンのシンクタンク、スティムソン・センターで働くオリ・ハイノネン氏は、調査には恐らく損壊した建物からの物質回収という複雑な手順や、法医学的調査、環境サンプリングなどが含まれ、長期にわたるとの見方を示した。
ハイノネン氏は「がれきの下で入手不能になったか、空爆時に失われた物質もあり得る」と語る。
IAEAの分析では、イランには核兵器級とされる濃縮度90%に迫る最大60%のウランが400キロ強存在し、これは濃縮活動をさらに進めれば9発の核爆弾に相当するという。
そのうちの一部でも残っていれば、イランが少なくとも核兵器保有の選択肢を保持していると考える西側諸国にとって重大な懸念となりかねない。
濃縮ウランが空爆前に施設から運び出された可能性を示す材料も幾つかある。
IAEAのグロッシ氏は、イスラエルが最初にイランの核施設を攻撃した13日、イラン側から核物質と関連機器を守る措置を講じたと伝えられたと明かしている。
ある西側外交官は、まるでイランは攻撃を受けると分かっていたかのように、フォルドゥにあった濃縮ウランの大半を攻撃の数日前に移動したもようだと述べた。
何人かの専門家も、フォルドゥが攻撃される前、衛星画像にトラックを含めた車列が見られたことから、濃縮ウランがどこかに移動した様子がうかがえると指摘している。
一方ヘグセス米国防長官は26日、イランが濃縮ウランを運び出したという情報は認知していないと発言した。トランプ氏は29日のFOXニュースの番組で、イランは何も動かさなかったと主張した上で「(濃縮ウランは)非常に危険でとても重い。移動は極めて難しい」と説明し、イランは空爆を直前まで察知できなかったと付け加えた。
別の西側外交官は、貯蔵濃縮ウランの現状を検証するのは大変な試練になると予想。「いたちごっこ」になるだろうと述べた。
<崩れた透明性>
イスラエルがイランへの「12日戦争」を仕掛ける前までは、IAEAがイランのウラン濃縮施設へ定期的に立ち入り、核拡散防止条約の取り組めに基づいて施設内部を24時間監視する態勢にあった。
しかし今、がれきと灰がそうした透明性の枠組みを台無しにしている。
さらにイランはIAEAに対する協力停止もちらつかせつつある。核拡散防止条約の枠組みが空爆を阻止できなかったことに憤り、最高指導者ハメネイ師の影響下にある護憲評議会は25日にIAEAへの協力を一時停止する法案を可決した。
イラン側は、IAEA理事会で今月、イランが核拡散防止条約の履行義務に違反しているとの非難決議を承認したことが、イスラエルによる攻撃につながったと主張。IAEAはこれを否定している。
これまでイランは繰り返し、核兵器開発のプログラムは存在しないと説明し、米国の情報機関も空爆前にはイランが核兵器開発を進めている証拠はないと分析していた。
ただ複数の専門家は、民生用のウランならば濃縮度5%弱で足りる以上、60%に濃縮度を高める理由が見当たらないと話す。
核拡散防止条約に加盟するイランは、貯蔵する濃縮ウランの状況を報告する義務がある。IAEAはそのイランの報告が正しいかどうかを査察などの手段で検証しなければならないが、イランが申告していない施設への査察は不可能で、権限は限られる。
イランはIAEAが知らない施設に追加の遠心分離機を保有しているとされ、それらが核兵器級の濃縮ウランの製造施設かもしれない点を踏まえると、核兵器転用可能な濃縮ウランの実態を正確に探り出すことはこの上なく重要になる。
<情報公開が重要>
3人目の西側外交官は「イランが400キロの高濃縮ウランについて明確な情報を示せば問題は管理可能になるが、そうしなければ誰にも何がどうなっているのか確かめられなくなる」と懸念する。
IAEAは、イランの核開発が完全に平和的とは保証できないが、核兵器開発プログラムだという信頼できる証拠もないとする立場だ。
米政府はIAEAによる検証・監視作業への支援を表明し、イランに査察官の安全を確保するよう要請している。
それでもIAEAが濃縮ウランを正確に把握できるまでには長い道のりを要する。
IAEAは、イスラエルによる攻撃開始以降査察を実行できず、イラン国外からは状況がつかめなくなっている。
グロッシ氏は25日、空爆された施設の環境下で査察官が作業するのは難しいと述べ、査察再開には時間がかかる恐れがあるとの見方を示した。
元査察責任者のハイノネン氏は、査察官が干渉されずに検証できる部分や、なお分からない部分をIAEAがリアルタイムで公開することが重要だと言及。「加盟国は、それに基づいて独自のリスク評価を行うことができる」と述べた。
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