ニュース速報
ビジネス

アングル:主要国の金利高止まり懸念が再燃、金融市場への影響に警戒高まる

2024年04月17日(水)16時44分

 4月17日、主要国の金利が比較的高い水準にとどまるのではないかという懸念が再燃し、大口投資家が金融市場への影響に警戒している。写真は3月、米ニューヨーク証券取引所で撮影(2024年 ロイター/Brendan McDermid)

Naomi Rovnick

[ロンドン 17日 ロイター] - 主要国の金利が比較的高い水準にとどまるのではないかという懸念が再燃し、大口投資家が金融市場への影響に警戒している。

予想外にインフレが長引く中、エコノミストらは特に米連邦準備理事会(FRB)による金融緩和が最小限にとどまると予想。大口投資家は長期保有銘柄の変更を急いではいないが、株式市場のボラティリティーは6カ月ぶりの高水準付近にある。

ブラックロック・インベストメント・インスティテュートのシニア投資ストラテジスト、アン・カトリンピーターセン氏は、世界の株式が「『higher for longer(より高く、より長い)』金利によるバリュエーションの低下」に見舞われるだろうと述べた。

欧州最大の資産運用会社アムンディは15日のノートで、米国株は今後10年間、世界的に後れを取るとの見方を示した。高成長を続けるインドや鉱物資源の豊富なチリやインドネシアなど、発展途上国企業の株式や債券がアウトパフォームすると予想している。

<新たなレジーム>

ブラックロックのカトリンピーターセン氏は、米国の金利は今後5年間で4%近く、ユーロ圏の金利は約2%になると予想。「われわれは新たなマクロ市場レジームに入ったが、その基盤の一つは構造的に高い金利だ」と語る。

世界の株式は今年に入って約4%上昇し、3月には過去最高を記録。また、世界のジャンク債指数は2021年以来の高水準付近にある。

しかし、再評価が必要なのは投資家が企業評価モデルに組み込む割引率で、これは米長期金利予想を反映する。会計会社EYの推計によると、この基準が1%ポイント上昇すると、企業の将来収益の現在価値は10%低下する。

投資家らは特に米国の株価は高すぎると話す。

バンガードによると、S&P500指数は長期金利予測に基づく公正価値を32%上回っている。

米10年国債利回りは約4.5%と、すでに割引率の上昇を予測している。

バンガードのシニアエコノミスト、チエン・ワン氏は、リスク資産が持ちこたえている一因は、投資家が企業評価モデルに入力する資本コストがかつて合意した低い融資金利を反映しているためだと指摘。米金利が3.5%前後で落ち着くと予想され、26年には企業の借り換えの波が来る中、「投資家は失望するだろう」と述べた。

<ボラ上昇>

市場は今年のFRBによる利下げを2回未満と織り込んでいる。欧州中央銀行(ECB)による最初の利下げは6月に織り込まれているが、利下げの継続性に関する見方は後退している。

ブラックロックのカトリンピーターセン氏は、株式については中立で、インフレ連動債を選好しており、長期国債は不安定なインフレの影響を受けやすいと考えているという。

ジャナス・ヘンダーソンで77億ポンド(95億8000万ドル)相当の欧州株を運用するトム・ルメグレ氏は、高金利で好調な銀行のポジションを増やす可能性があると述べた。また、ドル高と米国内製造業拡大の恩恵を受ける欧州の工業輸出国に対しても一段とポジティブに転じている。

同氏は、高水準の長期金利へのシフトがトレーダーの思考に定着するのは「まだこれから」と付け加えた。

それでも、米株のボラを測るVIX指数はこの数カ月間極めて落ち着いた水準で推移し、その後約19まで上昇。債券に関する指数も不安が高まるに連れて上昇している。

PGMグローバル(モントリオール)のストラテジスト、リチャード・ディアス氏は「市場が2回と考えていた(FRBの)利下げは1回になり、その後利上げ(を予想)に変わった場合、株式市場がそれを乗り越えるのは非常に困難になるだろう」と述べた。

ロイター
Copyright (C) 2024 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

独VWの第1四半期、営業利益が20%減 年間目標は

ビジネス

米テスラ、上級幹部を削減 追加レイオフも実施=ニュ

ビジネス

訂正-日経平均は続伸、米株高を好感 決算手掛かりに

ビジネス

3月新設住宅着工戸数は前年比12.8%減、10カ月
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「瞬時に痛みが走った...」ヨガ中に猛毒ヘビに襲われ…

  • 8

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 9

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 10

    ナワリヌイ暗殺は「プーチンの命令ではなかった」米…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 9

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    「誰かが嘘をついている」――米メディアは大谷翔平の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中