コラム

「悩んでる時もとりあえず頑張っておく」 油井亀美也宇宙飛行士に聞いた、若き日の苦悩と自分の選択を正解にする秘訣

2025年06月12日(木)12時35分

newsweekjp_20250611160855.jpg

独自インタビューに応じた油井亀美也宇宙飛行士。右には「亀」をモチーフにした今回のミッションのJAXAロゴマークが(6月6日) 筆者撮影

──寂しいとか心配とかばかり言われちゃうと、なかなか安心して宇宙に行けないでしょうから、心強いですね。

油井 そうですね。昔から「頑張って行ってきてね」くらいの感じで送り出してくれています。まあ実際はね、たぶん心配な部分もあると思うんですけど、そういうところは見せないでいてくれるので。

──素敵な奥様ですね。油井さんが宇宙飛行士候補者試験に応募するときも、背中を押してくれたと伺っています。身近な人と言えば、宇宙で待ち合わせする大西さんとの関係性も教えて下さい。記者会見で「宇宙で友達と待ち合わせできる特別な機会」とおっしゃっていて、同僚ではなく友達という言葉を使っていたところに気の置けない感じが出ていました。油井さんから見て、大西さんはどのような存在なのですか?

油井 本当に何でも相談できる仲間でお友達ですね。大西さんだけでなく、金井さんもそうなんですけれど、同期はやっぱり先輩後輩とはちょっと違います。同じ訓練をして苦労しているのでどうしても近くなりますよね。家族の次くらいに近い存在です。


食事をしたり相談があったら乗ってもらったりというのは、もう頻繁にしています。今はXで公にやり取りをしているのですが(※)、皆さんに見えないところでも密に交流していますよ。

※筆者注:油井さんと大西さんはISSで1週間ほど同時滞在する予定。そこで大西さんが同僚に髪を切ってもらっている写真とともに「バーバー大西は閑古鳥です。油井さんが来たら、きっと初めてのお客さんになってくれると思います」とXに投稿すると、油井さんが「ご遠慮させていただきます(笑)。それより、バーバー・ビューテホー・タートルが大西さんをカッコ良い髪型にして、地球へ送り返して差し上げます(笑)」と返すなど、息の合った掛け合いをしている。

──ぜひ非公式のやり取りも覗いてみたいです(笑)。同期の中でも、特に大西さんとは元パイロット同士ということで感性が似ている部分が多かったりするのですか?

油井 考え方は近いと思います。運用に関してやミッションに臨む準備の仕方も似ていますし、そういった意味でも本当に良い友人ですね。性格も似ていて、大西さんはクールに見えますけれど、Xを見れば分かるようにお茶目なところもありますし。

プロフィール

茜 灯里

作家・科学ジャーナリスト。青山学院大学客員准教授。博士(理学)・獣医師。東京大学理学部地球惑星物理学科、同農学部獣医学専修卒業、東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。朝日新聞記者、大学教員などを経て第24回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞。小説に『馬疫』(2021 年、光文社)、ノンフィクションに『地球にじいろ図鑑』(2023年、化学同人)、ニューズウィーク日本版ウェブの本連載をまとめた『ビジネス教養としての最新科学トピックス』(2023年、集英社インターナショナル)がある。分担執筆に『ニュートリノ』(2003 年、東京大学出版会)、『科学ジャーナリストの手法』(2007 年、化学同人)、『AIとSF2』(2024年、早川書房)など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

マクロスコープ:ディープシーク衝撃から半年、専門家

ビジネス

丸紅、25年4─6月期は8.3%最終増益 通期予想

ビジネス

財新・中国製造業PMI、7月は49.5に低下 予想

ワールド

米と合意した自動車関税引き下げ、速やかな履行求めて
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 2
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 3
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから送られてきた「悪夢の光景」に女性戦慄 「這いずり回る姿に衝撃...」
  • 4
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 5
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 6
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 7
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 8
    【クイズ】2010~20年にかけて、キリスト教徒が「多…
  • 9
    街中に濁流がなだれ込む...30人以上の死者を出した中…
  • 10
    50歳を過ぎた女は「全員おばあさん」?...これこそが…
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの習慣で脳が目覚める「セロ活」生活のすすめ
  • 3
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 4
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 5
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心…
  • 6
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 7
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 8
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 9
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 10
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 5
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 6
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 7
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 10
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story