コラム

運営停止に追い込まれた香港民主派メディアが筆者に語ったこと

2022年01月15日(土)18時30分

立場新聞の関係者が逮捕された直接の容疑は、「政府に対する憎悪を扇動する記事を掲載した」ことになっている。このことは筆者にとっても無関係ではない。

実は雨傘運動に対する弾圧の後に、同社の執筆陣は香港の歴史と運命を中国周辺の諸民族のそれらと関連付けて比較研究しようと試行錯誤していた。そこで複数の有力な編集者がモンゴルの近現代史を専門とする筆者と会い、中国共産党の自治政策について意見交換した。

その際、筆者は次の趣旨の発言をした。「中国共産党は最初、誰よりも甘い約束の言葉をささやきながら接近してくる。内モンゴルの場合は『モンゴル人の独立を支援する。少なくとも高度の自治を約束する』と標榜していた。そのスローガンを信じたモンゴル人が独立を放棄して中国領内にとどまる選択をすると、高度の自治ではなく、文化的自治のみが与えられた。そして中国は抑圧を緩めず、文化大革命中は内モンゴルで34万人を逮捕し、12万人を負傷させ、2万7900人を殺害した」。

その上で筆者は彼らに、香港は確実に内モンゴル人が歩んできた道をたどるだろう、そうでなければ、やはり漢族は漢族に優しく、漢人の香港には高度の自治が許されるのに対して、われわれ異民族はジェノサイド(集団虐殺)の対象にされるだけだと指摘した。

それに対して立場新聞の編集者、「われわれは漢民族ではなく香港民族だ」と語ったものだ。その彼は日本で暮らし日本の大学で教鞭を執っているが、12月末に香港警察から指名手配された。

日本が「香港民族」を守れるか否かもまた問われている。年が明けた1月4日には香港最後の民主派メディア「衆新聞」も運営を停止した。日本だけでなく、世界の民主主義陣営が中国の挑戦を受ける前兆であろう。

プロフィール

楊海英

(Yang Hai-ying)静岡大学教授。モンゴル名オーノス・チョクト(日本名は大野旭)。南モンゴル(中国内モンゴル自治州)出身。編著に『フロンティアと国際社会の中国文化大革命』など <筆者の過去記事一覧はこちら

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

EU、グリーンランド支持 国際法違反容認せず=コス

ワールド

トランプ氏、グリーンランド購入巡り活発な協議 NA

ワールド

ゼレンスキー氏、トランプ氏との会談を希望 「安全の

ワールド

米、ベネズエラ安定化・復興へ3段階計画 国務長官が
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:AI兵士の新しい戦争
特集:AI兵士の新しい戦争
2026年1月13日号(1/ 6発売)

ヒューマノイド・ロボット「ファントムMK1」がアメリカの戦場と戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    「グリーンランドにはロシアと中国の船がうじゃうじ…
  • 5
    日本も他人事じゃない? デジタル先進国デンマークが…
  • 6
    マドゥロ拘束作戦で暗躍した偵察機「RQ-170」...米空…
  • 7
    公開されたエプスタイン疑惑の写真に「元大統領」が…
  • 8
    トイレの外に「覗き魔」がいる...娘の訴えに家を飛び…
  • 9
    トランプがベネズエラで大幅に書き換えた「モンロー…
  • 10
    衛星画像で見る「消し炭」の軍事施設...ベネズエラで…
  • 1
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチン、その先は袋小路か
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 3
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙」は抑止かそれとも無能?
  • 4
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 5
    眠る筋力を覚醒させる技術「ブレーシング」とは?...…
  • 6
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 7
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 8
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 9
    アメリカ、中国に台湾圧力停止を求める
  • 10
    感じのいい人が「寒いですね」にチョイ足ししている…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 7
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 10
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story