コラム

ウイグルから香港まで......中国の欺瞞政策が「火薬庫」をつくる

2019年07月04日(木)14時20分

結局、全ては裏切られた。49年に共産党が打ち立てたのは民主連邦ではなく、人民共和国だった。自治区や自治州などを設置しても、実権を握る共産党書記は漢民族でなければならない。共和国体制とは全国の人民に対する共産党の一党独裁と、諸民族に対する漢民族の独裁だ。

国民党の「反動的にして反革命的」な同化政策を、共産党はさらに厳しく実行した。毛は「摻沙子(ツァンシャーズ、砂を混ぜる)」と称して、漢民族の辺境移住を奨励した。建国直後に新疆で28万人しかいなかった漢民族は、今や1000万人に迫る勢いを見せている。

故郷に後から進出してきた他者によって、生来の権利が奪われていくのをウイグル人は我慢できなくなった。ここから「抵抗と弾圧」という構造が生まれ、09年の事件が発生。その後、「ユーラシアの火薬庫」という新疆のイメージが形成されたのではないだろうか。

香港もそうだ。「高度の自治政策は50年間変わらないと約束したはずだ」と香港人が問いただすと、中国政府は「何の意味も持たない歴史上の紙切れ」と強弁する。共産党は一貫性のないスローガンを乱発して少数民族を欺きながら、一度も実行しようとしなかった。そこにウイグルから香港まで、中国が抱えている問題の根源がある。

<本誌2019年7月9日号掲載>

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プロフィール

楊海英

(Yang Hai-ying)静岡大学教授。モンゴル名オーノス・チョクト(日本名は大野旭)。南モンゴル(中国内モンゴル自治州)出身。編著に『フロンティアと国際社会の中国文化大革命』など <筆者の過去記事一覧はこちら

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