コラム

カザフ人2000人の中国大量出国は、ウイグル人抹殺の予兆なのか

2019年01月26日(土)13時40分

そうした歴史を踏まえれば、今回の報道からは、不屈なカザフ人を出国させてからウイグル人対策に徹しようという当局の狙いが見え隠れする。ただ、そのもくろみがうまくいくとは限らない。ウイグル人は「カザフ人にはカザフスタンという、よって立つべき祖国がある」と理解することになるからだ。

ウイグル人は独自の民族国家を持たないからこそ、中国政府に好き放題に抑圧されているという現実を明確に認識するだろう。独自の民族国家を建国して初めて植民地状態から解放される、とウイグル人の覚醒は一段と進むに違いない。

中国政府がウイグル人を弾圧し始めた直後、カザフ人は自身に及ばないとみて冷淡だった。だが中国は今や新疆ウイグル自治区に住む他の民族、例えばモンゴル人や回族(中国語を母語とするムスリム)に対しても、民族教育や礼拝を禁止する弾圧を強化している。

カザフスタンに出国したカザフ人たちが中国での経験を国際社会に暴露していくだろう。やがて諸民族の反乱が一気に噴出してもおかしくはない。

<本誌2019年01月29日号掲載>

※2019年1月29日号(1月22日発売)は「世界はこう見る:日韓不信」特集。徴用工、慰安婦、旭日旗、レーダー照射......。「互いを利してこそ日韓の国力は強まる」という元CIA諜報員の提言から、両国をよく知る在日韓国人の政治学者による分析、韓国人専門家がインタビューで語った問題解決の糸口、対立悪化に対する中国の本音まで、果てしなく争う日韓関係への「処方箋」を探る。

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

プロフィール

楊海英

(Yang Hai-ying)静岡大学教授。モンゴル名オーノス・チョクト(日本名は大野旭)。南モンゴル(中国内モンゴル自治州)出身。編著に『フロンティアと国際社会の中国文化大革命』など <筆者の過去記事一覧はこちら

ニュース速報

ビジネス

新型ウイルス、まずは中国経済注視 必要なら追加緩和

ビジネス

中国人民銀、景気支援へ追加措置の用意 新型ウイルス

ワールド

新型ウイルス、韓国の感染者346人に急増 中国では

ビジネス

フランス格付け見通しを「安定的に」引き下げ=ムーデ

MAGAZINE

特集:上級国民論

2020-2・25号(2/18発売)

特権階級が不当に罪を逃れている── 日本を席巻する疑念と怒りの正体

人気ランキング

  • 1

    「部外者」には分かりにくい、日本の見えないマナー違反

  • 2

    クルーズ船対応に見る日本の組織の問題点──権限とスキルの分離が組織を滅ぼす

  • 3

    韓国にパンブーム到来、ソウルの「日本のパン屋」に突撃取材した

  • 4

    「ホライモリは悲しんだ」......7年間、同じ場所で動…

  • 5

    「マスクは今週1億枚を供給、来月には月産6億枚体制へ…

  • 6

    深い眠りによって脳内の老廃物が洗い流されているこ…

  • 7

    ヒトの老化は、34歳、60歳、78歳で急激に進むことが…

  • 8

    映画「パラサイト」に隠れている韓国のもう一つの「…

  • 9

    中国の探査機が月に持ち込んだ植物の種、ハエの卵...…

  • 10

    新型コロナウイルス、急拡大の背景に排泄物を介した…

  • 1

    夜間に発電できる「反ソーラーパネル」が考案される

  • 2

    文在寅を見限った金正恩......「新型コロナ」でも問答無用

  • 3

    ロイヤルウェディングの招待状がほのめかしていたメーガン妃の離婚歴

  • 4

    殺害した女性の「脳みそどんぶり」を食べた男を逮捕

  • 5

    スキー・スノボに行かなくなった(行けなくなった)…

  • 6

    感染者2200万人・死者1万人以上 アメリカ、爆発的「イ…

  • 7

    新型コロナウイルスはコウモリ由来? だとしても、…

  • 8

    韓国、キャッシュレス完了した国が進める「コインレ…

  • 9

    新型コロナウイルス、人口2.6億のインドネシアで感染…

  • 10

    クルーズ船内「悲惨な状態」 神戸大・岩田健太郎教授、…

  • 1

    「歯肉から毛が生えた」という女性の症例が世界で初めて報告される

  • 2

    一党支配揺るがすか? 「武漢市長の会見」に中国庶民の怒り沸騰

  • 3

    ヒヒにさらわれ子どもにされた子ライオンの悲劇

  • 4

    マスク姿のアジア人女性がニューヨークで暴行受ける

  • 5

    新型コロナウイルスはコウモリ由来? だとしても、…

  • 6

    夜間に発電できる「反ソーラーパネル」が考案される

  • 7

    韓国で強まる、日本の放射能汚染への懸念

  • 8

    「武漢はこの世の終末」 チャーター機乗れなかった米…

  • 9

    BTSと共演した韓国人気子役がYouTubeで炎上 虐待さ…

  • 10

    「拷問死したアメリカ人学生」がはばむ文在寅の五輪…

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

英会話特集 グローバル人材を目指す Newsweek 日本版を読みながらグローバルトレンドを学ぶ
日本再発見 シーズン2
CCCメディアハウス求人情報
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
メールマガジン登録
CHALLENGING INNOVATOR
売り切れのないDigital版はこちら

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

絶賛発売中!