コラム

先進国から「泥棒」した技術で途上国支配 中国「盗用」史の舞台裏

2018年12月03日(月)18時00分

中国は改革開放政策を80年代から進めながら、日本や欧米の先進技術を盗んで、自国企業を育ててきた。90年代後半に入ると、中国市場に進出する外国企業に「製品を売るなら、まずは技術を完全に提供せよ」と迫った。産業革命以降、他国が長年かけて磨き上げた技術を中国は瞬時に手に入れようと強要し、世界との異質性を示した。

小国に横柄な態度を取り、先進国から技術を盗み取る行為は、中国の国家的野心の表れだ。今や中国は日本と欧米から「泥棒」した技術を「わが国の独自開発」とラベルを貼り替えて世界市場を席巻している。気が付けば、人工知能(AI)や顔認証システムなど、最先端の科学技術は市民の生活向上よりも、国民13億人の日常生活を監視し、生来の権利を主張する少数民族ウイグル人弾圧の道具として使われるようになった。

米中がいざ戦えば、米同盟国側が不利な立場に立たされる、との予測すら出かねない今、手をこまねいていれば世界は中国の「新植民地」一色になるだろう。アメリカはインド太平洋諸国のインフラ事業を支援する対抗措置を打ち出し、日本もこうした構想に熱心だ。

APEC閉幕後、首脳宣言が採択されなかった背景について「2人の巨人」の反対があった、とパプアニューギニアのオニール首相は語った。首脳宣言の採択断念は、1993年のAPEC首脳会議発足後、初めて。世界は欧米先進諸国対「技術泥棒」中国という両陣営の対立に神経をとがらせている。

今後も、米中のグレート・ゲームはインド太平洋を舞台に繰り広げられるだろう。

<2018年12月4日号掲載>



※12月4日号は「インターネットを超えるブロックチェーン」特集。ビットコインを生んだブロックチェーン技術は、仮想通貨だけにとどまるものではない。大企業や各国政府も採用を始め、データ記録方法の大革命が始まっているが、一体どんな影響を世界にもたらすのか。革新的技術の「これまで」と「これから」に迫った。

プロフィール

楊海英

(Yang Hai-ying)静岡大学教授。モンゴル名オーノス・チョクト(日本名は大野旭)。南モンゴル(中国内モンゴル自治州)出身。編著に『フロンティアと国際社会の中国文化大革命』など <筆者の過去記事一覧はこちら

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

アングル:外国投資家が中国株へ本格再参入うかがう、

ビジネス

ティッセンクルップ鉄鋼部門、印ナビーン・ジンダルか

ビジネス

米テスラ、19年の死亡事故で和解 運転支援作動中に

ビジネス

午前の日経平均は続伸、朝安後に切り返す 半導体株し
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 2
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 3
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 4
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 7
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く…
  • 8
    「なにこれ...」数カ月ぶりに帰宅した女性、本棚に出…
  • 9
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 10
    「この歩き方はおかしい?」幼い娘の様子に違和感...…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story