World Voice

ミャンマーでエンタメとクリエイトする日々

新町智哉|ミャンマー

ミャンマー軍の発表した1週間、24時間の停電発表の行方

この時期に咲くNgu War(グーワー)という花:筆者撮影

皆さんこんにちは。
ミャンマー最大都市ヤンゴンから新町智哉がお送りしております。
まずはウクライナの国民の皆さんの安全を祈っています。
全てがたった一日でひっくり返されてしまった日を私もこの国で感じました。
今絶望の淵にいるのか、その中でも希望を持って日々を暮らしているのか。

私には想像することしか出来ません。
ですが、日本で在日ウクライナ人と在日ミャンマー人の人々が一緒にデモをしているのをみたり、在日ロシア人の人たちも時の独裁者に対しNOを突き付ける意思を示しているのを見ました。
苦しい人同士の連帯がいつか世界を変えていくと信じています。

日本ではミャンマーの報道も随分と少なくなったようです。
それに伴いミャンマーへの関心も薄くなってきてしまっていると感じています。
ですが、ミャンマーの状況は決して好転したというような状況ではありません。
一見私の住むヤンゴンは平穏を取り戻したかのように見えるところはあります。
経済が動き出したところもありますし、新しいショッピングモールなどが一部盛況であるというような話も聞きます。

しかし、不穏な情報も沢山入ってきています。
遠く離れた日本の皆さんにこの不穏さがどこまで伝わるのかというのは非常に不安です。
ですが、私の仲間たちが日本で、世界で諦めずに活動を続けています。
まだゴールは見えませんが、動き続けることこそが唯一の光だと思っています。
現地で生活する私の肌感覚が少しでも伝わるよう発信を続けていきたいと思います。

お知らせです。
毎週火曜日、日本時間21時より
「ミャンマー言いたい放題ラヂオ」という配信を行っています。

配信は主にclubhouseで、最近はその他SNSなどでも同時配信しています。
ミャンマー現地から、そして東京外大ビルマ語学科の学生と共にミャンマーについて語り合う番組となっています。
情報アップデートを含めミニコーナーやメインテーマなどもあります。
是非一度聴いてみてください。

2.jpg

因みに次回は18回目になります。

よろしくお願いします。

さて、それでは本題です。
3月12日~18日、この間ミャンマー全土で24時間の計画停電を行うと軍から発表がありました。
ヤンゴンにも割と衝撃が走ったような感じでした。
事実だったらとんでもないことです。
2014年からミャンマーに住んでいる私もこれまで1週間ぶっ続けで停電が起こるなど一度も経験はしたことがないし、聞いた事もありません。

事実であれば、です。
私はこの発表については「諦め半分、呆れ半分」といったところで受け止めていました。
まず「正式に発表があったとしても覆ることはザラにある」というのがこれまでのミャンマーでは何度も起こってきたという事実があります。
いわゆる「あるある詐欺」的な事です。
「~月―日に24時間停電があります」と発表があったにもかかわらず実際は停電自体が起こらなかったり、起こったとしても数時間で終わったり。
「24時間じゃなくて30時間です」と次の日には内容が変わったり。

停電に関してもですが、例えば新しい法律に関しても
「~法がいついつより施行されます」
みたいな発表があったにもかかわらずそもそもその新しい法律がどんな内容なのかもよくわからなかったりすることも何度もあります。
なので大きな発表があったとしても少なくとも日本のようにキチンと精査されてのものではないという事は経験上身に染みていました。

実際、上記「1週間停電発表」の次の日には。
24時間ではなく随時停電するというような発表が改めて出されたりしました。
そもそも、何故計画停電をする必要があるのかなどの内容も、システムのメンテナンスだとか、深刻な電力不足だとかハッキリしませんでした。
こう感じていたのは私だけではなく多くの現地ミャンマー人の人たちもそのように感じていたようです。

さて、ではこの計画停電に指定された1週間はどうだったのか?
地域ごとに差はあるようですが、私のいた地域では毎日5時間~最大18時間ほどの幅で停電が起こりました。
場所によっては毎日2,3時間程しか電気がこなかったところもあったようです。
逆にほとんど停電が無かったという地域も確かに存在していたようです。
そういった地域には大体軍の主要施設などが近くにあるという事でした。
なんとも腹立たしい事ではありますが、軍は自分たちの都合で電力の割り振りを好き勝手決めていたようです。

ミャンマーでは一年で最も暑いのが4月です。
40度を超える日も珍しくないわけですが、3月に入ってからは一気に気温が上がって今日なども最高気温は37度。
体温より高い日々が続いています。
そんな中エアコンも使えなくなる停電はかなり身体的にもキツイものがあります。

しかしそれ以上にいつ始まるかわからない停電、そして停電した後、いつ復旧するかもわからない停電です。
計画停電とは名ばかりでほとんどの場合はキチンと情報も流れてきませんし、流れてきたとしてもその通りにならないのがほとんどです。

ミャンマーに住んでもうすぐ8年になる私ではありますが、暑いのは苦手です。
停電しても多少はバッテリーなどで最低限の電源はあったりしますが、これだけの長時間の停電が断続的に続くと日中の作業もままなりません。
電気のある場所へ移動するという手もありますが、いつから始まりいつ終わるかもわからないので中々予定を立てれず、少なくとも効率的に動くというのから遥かに遠い生活をせざるを得ない状況です。

クーデター以降、軍からの嫌がらせは様々聞いてはいたのですが、実際この計画停電攻撃はこれまでで一番私には堪えます。
ですが、こんな時ミャンマーの人はタフだなと思います。
近年随分インフラが整ってきていたので停電も少なくなっていましたが、ほんの10年前までは当たり前のように毎日電力不足だったりするので電気が無いならないなりの過ごし方をやっているようでした。
何より暑いのには私より耐性があります。
そんなところは見習わないといけないなと思い直し、電気が無い時の対策など、日本では絶対考えないようなことを日々実践しながら1週間過ごしました。

そして結局今日現在、停電は続いています。
特に先週と変わりない感じです。
一体この1週間は何だったんだと思いますが、ある意味予想通りでもあります。
ミャンマーの人から言わせると
「また軍政時代に戻ったみたいだ」
といったところでしょう。

仮初の民主化でも勢いよく進んでいたミャンマーという国が再び発展途上国に陥るのにたった1年もかからなかった訳ですから政治の大切さを本当に身に染みて感じている今日この頃です。

さて、これが今回の停電騒動に関しての報告ではあったのですが、このことについて色々と話を聞いたり調べたりしている内に見えてきたことがあります。
恐らく軍としてはこちらが本命なんだろうという事が予想され少し不気味さを感じています。
あくまで私が見聞きしたことを基にした推察ではありますが、次回はその辺りをお伝えできればと思います。

最後に、
日本でウクライナ情勢のニュースをみて心を痛めている方も多いと思います。
目をそむけたくなるようなことばかりだと思います。
しかし、ミャンマーで起こっていることが決してそれより軽いという事はありません。
そのことが本当の意味で理解できたからこそ今、ウクライナの人々もミャンマーの人々へ連帯を示しているのかもしれません。

どうか一日も早くこの動乱が収まる事を願っています。

それではまた明日。

 

Profile

著者プロフィール
新町智哉

映像プロデューサー。2014年からミャンマー最大都市ヤンゴンに在住。MAKE SENSE ENTERTAINMENT Co.,Ltd. GM。日緬製作スタッフによる短編コメディ「一杯のモヒンガー」でミャンマーワッタン映画祭のノミネートを皮切りに世界各国の映画祭で受賞。起業家、歌手、俳優としてもミャンマーで活動する。

Twitter:@tomoyangon
Instagram:tomoyangon
note:https://note.com/tomoyaan

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