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England Swings!

ラッシャー貴子|イギリス

コロナ禍の外食事情 レストラン編

(営業を再開したパブやレストランでは、外のテラス席が人気。筆者撮影)

 新型コロナウィルスの影響で英国では3月にレストランやパブがすべて閉鎖されたが、今は決められた条件(「テーブルの間隔をあける」など)を満たせば営業できることになっている。

 レストランの再開が始まったのは7月4日。「スーパー・サタデー」と呼ばれた当日の夜は、大喜びの人たちが都市部に繰り出し、ロンドンのソーホー地区などはソーシャルディスタンスどころか、道路にも溢れた人でぎゅうぎゅう詰めの大混雑。見ているだけで怖くなる光景だった(実際、その場での感染が確認されて、営業停止になった店もあったそう)。

 この日は少し興奮しすぎだったものの、家で食事をすることにあきあきしていた人は多かったし、地元のパブは英国では社交場でもあるので、レストランやパブの再開は歓迎された。外出禁止中も食事を宅配してもらうことはできたが、家ではない場所で飲んだり食べたりできるのは、やはり気分が変わってとても嬉しい。それに、食事がまずいとよくばかにされる英国にも、おいしいものはたくさんあるのだ。

 とはいえ、室内の食事にまだ抵抗がある人も多いので、これを機会にどこでもテラス席をぐんと増やして人気になっている。夏でよかったなあ。特に今年の夏は全体に天気がよく、気温も高めで、気分的にもずいぶん助かっていたのだ。

 わが家では夫が料理好きなので、それなりに楽しくやっていたが、外で食事をする楽しさはやはり別物だ。友人夫妻に誘われて、7月中旬にレストランでのランチに出かけることにした。少し不安があったものの、4人のうち3人がロックダウン中に誕生日を迎えていたし、レストランの様子をのぞいてみたい好奇心もあって、誘いに乗ることに。不安をさりげなく伝えたら、対策がしっかりしていそうないいレストランを友人が選んでくれた。

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(非日常の空間は、やっぱり嬉しい。筆者撮影)

 当日、ドアマンに扉を開けてもらって中に入ると、吹き抜けの高い天井やどっしりした調度品の高級感で、すぐに心が躍り出した。日常じゃない空間って、やっぱり楽しい。

 入り口で予約の名前を伝えると、まずは体温測定への協力をお願いします、と、にこやかにお願いされた。小さなスクリーンの前に立つと自動で画面上にピピッと体温が表示されるしくみだ。おお、こんな機械、初めて見た!

 感激しつつ、やはり入り口にあった消毒ジェルを手にすり込みながら席に着いた。隣の席との間隔はばっちり空いている。もともと余裕のあるスペースだったようで、無理やりテーブル数を減らしたようには見えず、自然な感じだ。そしてこの日曜のランチの時間、席はほぼ満席だった。 

 席に着くと、ナイフやフォークと一緒にこんなものを持ってきてくれた。

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(筆者撮影)

 小さな消毒ジェル! 入り口で消毒液を使ったのに、さらに念を入れてということか。しかもこんなに気の利いたもの、イギリスにもあったんだ、と大感激。この国では基本的に食事の前におてふきが出ることはなく、コロナ前なら特に手も洗わず、そのままパンをつかんで食べていた(最初のうちこそ落ち着かなかったわたしも、すぐに慣れてしまった)。もしかして、こういうちょっとした、あまり衛生的でない習慣の積み重ねもウィルス感染拡大につながっているのかもしれない。

 ところでジェルのパッケージをよく見ると、コンタクトレンズの絵とともに、clinically evaluated(臨床的な評価あり)の文字があった。これで消毒したらコンタクトレンズを扱っても大丈夫ということかしら。小さいのになんて本格的なジェル。英国のレストラン業界や消毒液業界(?)の真剣な取り組みと苦労がしのばれる。

 メニューを選ぶ間にも、帰って行った客のテーブルや椅子が見慣れない消毒液のようなものでごしごしと拭かれているのが目に入った。やはり非常時なんだなと思い出しつつ、てきぱき動く店員を見ていると安心でもある。

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(日曜日だったのでローストビーフを。筆者撮影)

 久しぶりの外食、しかも特別にすてきなレストランでの食事はとても楽しい時間だった。その友人夫妻とのロックダウン中のピクニックもよかったのだが、テーブルに座ってゆっくり話せることがとてもぜいたくでありがたいことに思われて、食事も格段においしく感じられた。

 食後のコーヒーとともに、またまた先ほどの小さなジェルが登場。かなり細かい配慮がされていることを感じて、大満足で店を後にした。

 高級レストランでは対策が万全なことはよくわかった。では日常的なパブはどうだろう? というわけで、次回はパブ編をお届けする予定。

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(化粧室前の床にはソーシャルディスタンスを促すマークも。筆者撮影)
 

Profile

著者プロフィール
ラッシャー貴子

ロンドン在住15年目の英語翻訳者、英国旅行ライター。共訳書『ウェブスター辞書あるいは英語をめぐる冒険』、訳書『Why on Earth アイスランド縦断記』、翻訳協力『アメリカの大学生が学んでいる伝え方の教科書』、『英語はもっとイディオムで話そう』など。違う文化や人の暮らしに興味あり。世界中から人が集まるコスモポリタンなロンドンの風景や出会った人たち、英国らしさ、日本人として考えることなどを綴ります。

ブログ:ロンドン 2人暮らし

Twitter:@lonlonsmile

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