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スタートアップ超大国 インド~ベンガルールからの現地ブログ~

永田賢|インド

ベンガルールにおける牛の屠殺禁止令と代替肉のフードテック

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ヒンドゥー教が国民の多数派を占める国に生きているので、「教義で聖なる存在とされている牛を食べるために殺すことはご法度、ビーフNG!」というのはあり得ることなのかなぁと思いつつも、まだ先の話だろうと感じていましたが、そんなことはなく、当地に住む日本人にとって、やや衝撃的な法案が州政府で通過されてしまいました。

1.カルナータカ州における牛の屠殺禁止令

タイミングとしては、1月第1週ですね、以下のように報道が立て続けにでてきました。(法案が通るかもしれないとの報道自体は12月に出ていました。)

With Karnataka governor nod, cow slaughter ban kicks in | Bengaluru News - Times of India (indiatimes.com)

内容としては、以下の通りです。基本は水牛(13歳以上)以外の牛は殺すなというのがメッセージです。

【概要】

■法案は、あらゆる形態の牛の屠殺を禁止し、違反者を厳しく処罰することを想定している。
■この法案は、2010年に成立した法案を修正したもので、1964年カルナタカ州の牛の屠殺と牛の保存法の防止を廃止。
■牛の定義:現行法案では、牛は「牛、牛の子牛、雄と雌の水牛」と指定され、それらの屠殺が禁止されている。
■水牛の免除規定:2020年法案の下で免除されるのは、13歳以上の水牛で、管轄当局の認定を受けたもの、医学研究に使用される牛、病気の蔓延を防ぐために獣医師の認定を受けて屠殺される牛、重症の牛のみである。
■罰則規定:新法案では、懲役期間を3年から7年に規定。罰金も5万ルピーから50万ルピーに規定。
■屠殺のための牛の輸送、肉の販売と購入または処分に対して、新しい罰則を規定 - 3から5年の刑期と5万ルピーから50万ルピーの罰金を科せられる。

参照元:The Karnataka Prevention of Slaughter and Preservation of Cattle Bill, 2020 - JournalsOfIndia

そして、以下が1週間経ったあとのニュースですが、逮捕者が出たようです。

Karnataka Cow Slaughter Bill, First Arrest: Karnataka Makes First Arrest Under Controversial Cow Slaughter Bill (ndtv.com)

この記事でもう一つ怖い文面があり、自警団のような集団がドライバーに対して暴行を行ったという点です。

The driver, who was allegedly also assaulted by the vigilantes who forcibly stopped and searched his truck, has been charged with "illegal transport" of cows and is being treated at a local hospital. A separate case has been filed against his attackers.

Karnataka Cow Slaughter Bill, First Arrest: Karnataka Makes First Arrest Under Controversial Cow Slaughter Bill (ndtv.com より引用。)

妄想の枠を越えないですが、宗教的熱狂者が今後、「お前牛扱っているだろ!」といういちゃもんをつけてマイノリティや非ヒンドゥー教教徒へ暴行事件等を起こさないか心配になりました。

過去もデリー近郊で似た事件が発生していました。(もちろん、過激派や宗教的熱狂者は一部に限定されます。

「牛食べた」と疑われた男性、約100人から暴行受け死亡 インド 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News

私の身の回りとしては、以下のような反応がありました。

■よく行く食肉店「この法令でビーフなんか扱えるわけないだろ、もう在庫もないよ!水牛ならあるかもしれない。」

■よく行くビーフステーキ店「牛はもうだめ。鶏と羊でなんとかする。」

■別なビーフステーキ店「いや、牛はやりますよ(小声)」

周りの在住者からも店舗によって対応パターン(牛を扱う店舗と扱わない店舗の情報が乱立)が変わっており、引き続きの情報収集と要らぬ紛争に巻き込まれないような配慮が必要だと改めて感じました。

ちなみに、面白い統計もあり、インドは牛肉の輸出量が伸びているというものです。

India's beef exports rise under Modi govt despite Hindu vigilante campaign at home (theprint.in)より引用)

こちらの統計レポートも面白いです。

水牛肉生産の現状と今後の見通し(インド)|農畜産業振興機構 (alic.go.jp)

2.代替肉のフードテックはインドにあるのか?

今回、この条例を見て、ふと感じたのが、「代替肉のフードテックとか出てくるのか?」という点です。

シンガポールや欧米では代替肉での大型調達が目立っているので、べジ大国でもあるインドでも出てきそうなものだと感じました。

ちなみに、ここでのフードテックの意味は以下の農林水産省定義に準拠します。

今後世界的にタンパク質の需要が増加していくと見込まれる中で、「おいしさ」といった消費者ニーズ・食の豊かさを確保しつつ、その安定的供給を確保するためには、国内の畜産業等の生産基盤を強化することはもちろんのこと、食に関する最先端技術(フードテック)を活用したタンパク質の供給源の多様化を図るなどの方策により、食料安全保障上のリスク低減を模索することが重要です。他方で、こうしたフードテックの分野は我が国では産業の黎明期にあり、産業育成上の課題も多い状況となっています。(フードテック等を活用した持続可能な産業育成:農林水産省 (maff.go.jp)より引用。)

これらの視点で、先端技術を用いて「代替肉」にフォーカスしたスタートアップがないか見てみました。

パッと出て来たのはこちらですね。

Clear Meat - India's first Ecofriendly, nutritious and affordable meat initiative

細胞培養でタンパク質を生成して代替としての鶏肉を作っているスタートアップのようです。

この手の細胞培養技術は高コストのイメージがありましたが、こちらの報道だと、破格の低コスト体質を持っているようです。

Unlike most lab-grown meat makers, ClearMeat claims its production cost, at $10.77-11.44/kg, is already on par with conventional chicken mince prices.

Co-founder Dr. Siddharth Manvati tells FoodNavigator ClearMeat chose minced chicken because it is a popular meat in India. He also believes the company can further reduce its price. (ClearMeat targets clean meat adoption in India : Biofuels Digestより引用。)

報道を見るに、パテント登録が完了したので、これからマーケットインのようです。市場に出てみたら試してみます。

ClearMeat: India's First Cell-Based Chicken Maker Files Patent For Cultivated Meat Technology (greenqueen.com.hk)

加えて、こちらは植物由来の代替肉を作っているスタートアップとなります。

Best Food Company - Gooddot Veg & Non-Veg Products Company

【製品イメージ】