World Voice

powerd_by_nw

Fair Dinkum フェアディンカム・オーストラリア

平野美紀|オーストラリア

オミクロン株懸念と感染者急増のなか、規制緩和するオーストラリア

新型コロナ感染者数が連日、過去最多を記録するなかで迎えたクリスマス。シドニー郊外のビーチでは、家族や仲間で集う姿が多くみられた。注意)写真は今年ものではありませんが、今年のクリスマスもほぼ同じ光景が見られました。(Credit:Julien Viry-iStock)

クリスマスまであと約3週間と迫った12月3日、シドニー西部で、オミクロン株による市中感染が確認されたことで、住民に衝撃が走った。

オーストラリア国内で初となるオミクロン株の『市中感染』が確認されたのは、シドニー西部のリージェンツパーク・クリスチャン・スクールに通う3人の生徒。当局は、すべての職員と生徒に対し、検査と自主隔離を要請。このケースは、「渡航歴がなく、渡航歴のある人との接触もない」として、警戒を強く呼び掛けた。(参照

この日以降、オミクロン感染者は、シドニーのあるニューサウスウェールズ州だけでなく、他州でも確認され、1日の新型コロナウイルス感染者数(オミクロンに限らない)は増え続け、連日、過去最多を更新している。

しかし、モリソン首相は、12月21日の会見で、「行動制限で国民を縛る体制から脱却する必要がある」と述べ、再びロックダウンに戻ることはないと明言。(参照

22日には、緊急閣僚会議を開いたが、連邦政府として規制をとくに強化することはないとし、例えば、屋内でのマスク着用を強く推奨するが、義務化することはせず、各々の「常識」に委ねると発言した。(参照

以前のコラムに書いたように、オーストラリアとしては、目標とする高いワクチン接種率が達成できたら、感染数にこだわるのではなく、重症者数や死者数を見ていくべきとするモリソン政権(連邦政府)の方針に沿って、各州政府は今、接種率を上げて正常化する道を邁進中といえる。

欧州や英国などでは、オミクロン株懸念で、再び規制強化やロックダウンに逆戻りする動きもあるなか、オーストラリアは逆の方向へ舵を切った格好だ。

オミクロン株を警戒して入国時の隔離要件を強化したが、すぐに緩和

オーストラリアは、11月25日に南アフリカでオミクロン株が最初に特定されたことを受け、同27日には、国民/永住者と一部の特定ビザを取得している人以外の入国を再び禁止し、アフリカ南部からの航空便の乗り入れを制限。指定されたアフリカ南部の国々からの到着者に対し、14日間の強制隔離、その他の海外諸国からの到着者には、72時間の自己隔離が再び課されることになった。

また、11月21日から試験的に開始していたシンガポールとのトラベル・バブルは、オミクロン懸念で、同28日に一旦中断。12月1日からは、シンガポールに加え、日本と韓国も、2回のワクチン接種を完了した特定ビザ保持者の入国が可能となるはずだったが、同30日、この2国についても急遽、12月15日まで延期となるなど、各方面で混乱を極めた。

オミクロン株による市中感染が確認された後、ニューサウスウェールズ州では、新規感染者数が急増していたが、15 日からは、ほとんどすべての規制を撤廃。上記のような規制や一時的な措置も解除された。さらに、ニューサウスウェールズ州とビクトリア州の2州は、21日から、海外から到着後72時間の自己隔離も不要となった。(州によって対策が異なるため、12月25日時点では、この2州のみであることに注意)

規制を緩和する傍らで、急増する新規感染者数

ところが、規制を緩和する一方で、ニューサウスウェールズ州では、12月16日に、1日の新規感染者数が2,000人を超え、その後も爆発的に増加。25日には、パンデミックを通じて過去最多となる1日6,288件を記録。入院者数は微増しているものの、死者数はこれまでとさほど変わらず、1日0~3件程度だが、感染者急増を懸念して、クリスマスや年末年始の計画を変更する人も増えたそうだ。

また、他州でも新規感染ケースが急増。感染ケースほぼ0が続いていたクイーンズランド州は、ワクチン接種者を対象とした州境規制の緩和を開始した頃から徐々に感染者が増え始め、25日には765件という、パンデミック全期間を通して見たこともない数を記録。ビクトリア州は、24日には再び2,000件を超えた。

国と州、州毎に異なり、把握しにくいチグハグな対策

これまでのコラムでも書いてきたように、オーストラリアは国と州の方針が異なることが多々あり、さらに、州毎にそれぞれ独自の対策を行っているため、統一した基準がなく、非常にわかりにくい。

モリソン首相が、「屋内でのマスク着用を義務化することはない」と規制強化を否定する発言をしたその翌日には、ニューサウスウェールズ州政府が、屋内でのマスク着用義務とQRコード・チェックイン、飲食店などでの顧客1人あたり2平方メートルのスペース確保のルールを再導入すると発表。

ビクトリア州やクイーンズランド州も、マスク着用義務を再び課したり、着用対象を広げたりするなど、モリソン首相の発言に逆らうがごとく、各州は規制を強化する方向へ動き始めており、とにかくチグハグ感が否めない。

マスク着用再義務化関する告知ツイート。上のツイートはビクトリア州、下はクイーンズランド州(ツイート主は州首相)。

感染拡大懸念から規制を強化する州政府と、前だけを見て規制緩和へ踏み切る連邦政府。ともすると、両者から発信されるメッセージが真逆にもとれ、受け手側=住民が振り回されているようにも感じることがある。オミクロン株の登場以降、感染者数が激増し、各所に支障がでてきているのも事実...

それでも、ニューサウスウェールズ州は、本格的なワクチン接種開始で高接種率を達成するまで、何ヶ月もロックダウンとなっていたこともあってか、住民らは接種率が高いことを理由に、「後ろに戻ることはない。もうロックダウンはしない」というモリソン首相の発言を支持する人が多いようだ。

しかし、その逆に、ここへきて感染が急増しているとはいえ、これまで感染がほぼ0で、ロックダウンになったこともほとんどなく、ほぼ規制がなかった州の住民は、ワクチン接種率が上がるまで(?)規制が強化されるという、逆パターンとも思える対策をどう感じているのだろう.. という疑問も湧く。

ワクチンの接種率が高いにも関わらず、急増するオミクロン感染拡大の対応に苦慮している欧米のことなど、見て見ぬ振りかのごとく、独自路線ともいえる方向へ突き進もうとしているオーストラリア。これから一体どうなっていくのか... しばらくは、先が読めない状態が続きそうだ。〈了〉

 

Profile

著者プロフィール
平野美紀

6年半暮らしたロンドンからシドニーへ移住。在英時代より雑誌への執筆を開始し、渡豪後は旅行を中心にジャーナリスト/ライターとして各種メディアへの執筆及びラジオやテレビへレポート出演する傍ら、情報サイト「オーストラリア NOW!」 の運営や取材撮影メディアコーディネーターもこなす。豪野生動物関連資格保有。在豪23年目。

Twitter:@mikihirano

個人ブログ On Time:http://tabimag.com/blog/

メディアコーディネーター・ブログ:https://waveplanning.net/category/blog/

あなたにおすすめ

あなたにおすすめ

あなたにおすすめ

あなたにおすすめ

Ranking

アクセスランキング

Twitter

ツイッター

Facebook

フェイスブック

Topics

お知らせ