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平野美紀|オーストラリア

ニュージーランドが2022年初頭の国境再開を目指す、ワクチン接種者優遇措置案

世界各地で進むスマホ型の「ワクチン・パスポート」のような形になるのか、どんな形になるのかはまだ未定だが、ワクチン接種者への入国制限を緩和することを目標に掲げたニュージーランド。(Credit:dikobraziy-iStock)

8月12日、ニュージーランドは、2022年初頭の国境再開に向けた暫定的な緩和策を発表した。

新型コロナウイルスによる世界的パンデミックが始まった2020年3月には、国民と永住者以外の入国を拒否し、事実上、国境を閉鎖。世界で最も厳しい国境コントロールをしてきたニュージーランドが、ここへきて転換を図ろうとしている。

12日の会見で、アーダーン首相は次のように述べ、厳格な国境管理によって、感染者数は3,000未満、死亡者数わずか26人と、先進国随一の感染制御成功を強調した。

「ニュージーランドが、(コロナ感染拡大によって)英国や米国と同じくらい大きな打撃を受けていたら、1万人近くのニュージーランド人が亡くなったことでしょう」

とはいえ、「家族や友人など大切な人と離れ離れになり、産業界が熟練した雇用獲得の機会を失い、人々が個人的なつながりを感じられず孤独になるなど、多大な影響があった」と、国境閉鎖の影響は、様々な面から厳しいものであったことをうかがわせた。(参照

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美しい山々がそびえ、世界中の観光客を魅了してきた世界遺産登録地域にある「ミルフォード・サウンド」。観光立国でもあるニュージーランドにとって、国境閉鎖による影響は大きい。(Credit:venturedesign-iStock)

アーダーン首相は、現段階ですぐに国境を再開できる状態ではないとしつつも、再開に向けた新たな一歩として、最終的にはワクチン接種済みのすべての渡航者が検疫なしで入国できることを目標に定めた『国境再開までの新たなアプローチ』に関するロードマップを発表。

隣国として、常に姉妹のように歩んできたオーストラリアにとって、このニュージーランドの新たな展開は、大きな影響を与えるはずだ。

これまでのゼロコロナ戦略を継続しながら、新しいアプローチの試み

まず、新たなアプローチの一歩として、今年10月から12月にかけての一部の帰国者に対し、ワクチン接種済であれば、自宅での自己隔離を認めるプログラムを試験的に実施するという。

ニュージーランドでは、国民や永住者が帰国する場合でも、入国時に14日間の政府指定施設での厳格な検疫隔離(MIQ)が必須だったが、それを自宅隔離へ切り替えていきたい考えのようだ。

これは、これまでとってきた市中に感染者は絶対に出さないという『完全ゼロコロナ』ではなく、感染者がある程度出ることを想定した戦略になっているのが特徴といえる。

とはいえ、アーダーン首相は、

「早々とウイルス排除のアプローチを放棄してしまうと、後戻りできなくなる。ワクチン接種を早期開始した一部の国が経験しているように、(直ちに規制を緩和してしまうと)この国でも重大なブレークアウトが発生する可能性がある」

と、ウイルスを排除する(ゼロコロナを維持する)という戦略はこれまで通り継続し、放棄するつもりはないことを明らかにした。

つまり、一気に規制を緩和することなく、9月からは対象となるすべての年齢層へのワクチン接種を開始するなど、これまで進めてきた国内のワクチン戦略を拡大し、慎重なアプローチで1件でも市中で感染ケースが確認されれば、すぐに潰し、通常の生活を維持しつつ、これからの約半年間でコロナとのあり方を模索していくという。(参照

自宅での自己隔離体制に対して専門家は懸念

ただ、このMIQ検疫ではなく、自宅での自己隔離検疫へ変更することについては、NZ国内の専門家は懐疑的なようだ。

政府へ国境再開とワクチン接種に関する研究報告書を提出した公衆衛生専門家グループを率いるデビッド・スケッグ教授は、

「人々は、『ワクチンを接種していれば、自宅での隔離でも大丈夫だろう』と考えがちだが、ワクチンの効果が100%ではないことを忘れているようだ」

と、デルタ株で感染拡大しているシドニーの例を挙げ、(以前からそうであるが)家庭内感染が深刻なデルタ株であればなおさら、自宅隔離は良いアイデアではないと警鐘を鳴らした。(参照

各国の感染状況に応じたリスク評価とワクチン接種状況による検疫

次に、ニュージーランドへの入国者のリスクを個別に評価する新しい国境システムを導入。

各国を感染状況に応じて、独自基準で低、中、高の3段階でリスク評価し、さらに入国する人がワクチン接種済か否かなどによって、検疫対象を細かく分けることを想定しているという。

例えば、低リスク国のワクチン接種者は、検疫隔離なしで入国可。中レベルのリスク国からの渡航者であっても、ワクチン接種者であれば、これまでの14日間のMIQ検疫に代わる検疫体制を再考することなど、リスクに応じた入国規制緩和から始め、最終的にはワクチンを接種していれば検疫なしで入国できるようにするのが目標だとしている。

今後の状況によっては変わる可能性もあるが、12日の会見発表によると、以下のような感じになる見込みだ。(参照

● Low risk(低リスク)― ワクチン接種済みの低リスク国からの渡航者 ⇒ 隔離不要

● Medium risk(中リスク)― 中リスクの国からワクチン接種者 ⇒ 隔離要件を変更(自宅隔離、期間の短縮などを検討)

● High risk(高リスク)―ワクチン未接種者、および高リスク国からのすべての渡航者 ⇒これまで通り 14日間のMIQ検疫

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国境再開に向けて動き出したニュージーランド。

オーストラリアとの検疫なし2国間バブルも、オーストラリア主要都市で感染拡大していることから、無期限停止となっていることを考えると、本当に来年早々に実施できるのだろうか?という疑問は残る。

とはいえ、まずは、10月からの試験プログラムで、会いたくても会えなかった家族や恋人たちが少しでも早く再会を果たせるようになれば...という国民への配慮もあるのだろう。

ニュージーランドは、観光立国でもあるがゆえ、本当ならすぐにでも世界から大勢の旅行者に来てもらいたいのが本音だと思うが、せっかくここまでウイルス制御を成功させてきたのだから、その努力を無駄にしないよう、世界の状況を見ながら、より慎重に進め、アフターコロナのお手本となって欲しい。〈了〉

 

Profile

著者プロフィール
平野美紀

6年半暮らしたロンドンからシドニーへ移住。在英時代より雑誌への執筆を開始し、渡豪後は旅行を中心にジャーナリスト/ライターとして各種メディアへの執筆及びラジオやテレビへレポート出演する傍ら、情報サイト「オーストラリア NOW!」 の運営や取材撮影メディアコーディネーターもこなす。豪野生動物関連資格保有。在豪23年目。

Twitter:@mikihirano

個人ブログ On Time:http://tabimag.com/blog/

メディアコーディネーター・ブログ:https://waveplanning.net/category/blog/

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