コラム

力不足を露呈したバイデン政権の一年間

2021年12月23日(木)16時55分

また、米国は急激なインフレで国民生活が悪化しつつあるが、この点に関してもバイデン政権の対応は「見ているだけ」だ。

国際協調による石油備蓄放出パフォーマンスだけで、党内左派の圧力でインフレの原因の1つである国内のエネルギー資源開発規制強化の方針を撤回できていない。

仮に共和党の抵抗でとん挫した増税案が実行されていたなら、電力や水道などの社会インフラ価格の値上げも引き起こされていただろう。

インフラ投資政策は本来必要な道路などの物理的なインフラ投資案は速やかに成立したものの、無謀な財政支出が伴う社会福祉・気候変動インフラ投資政策は党内外から激しい批判にさらされている。この政策が万が一成就した場合、米国のインフレは更に更新するだろう。

バイデン政権は全てのインフレ対策をFRBに丸投げしようとしており、それは米国の金融市場に混乱を引き起こし世界経済にも悪影響を及ぼすことは明白だ。

日本もバイデン政権の力量不足を念頭に置いた対応に

この1年間で示されたバイデン政権のパフォーマンスは外政・内政ともに信頼に足るものではない。しかし、この惨憺たる政権は来年も継続するため、日本側もバイデン政権の力量不足を念頭に置いた対応にシフトしていくべきだ。

外交安全保障政策に関しては、米国主導の枠組みの進展は期待できないので、日本独自の政策を強化していくべきだろう。TPPを基軸とした高度な貿易投資体制を強化し、インド太平洋地域で独自のリーダーシップを発揮し、先制攻撃能力も含めた軍事力強化を行うことが望ましい。その上で、バイデン政権の対ロシア傾向を抑止し、米国の戦略正面をアジア太平洋地域に向けさせることが重要だ。

国内政策は岸田政権の「新しい資本主義」が志向する社会主義的方向性を見直すことが急務だ。米国の経済政策が混乱していることを好機とみなし、減税と規制廃止を通じて投資を呼び込む方向にもっていくことが望ましい。これは2022年7月参議院議員選挙の結果次第ということだろう。

いずれにせよ、来年はバイデン政権のひどすぎる状態が連邦議会議員選挙での共和党勝利によって是正されることに期待したい。いまや世界の最大のリスクはバイデン政権の政権運営能力不足だと言っても過言ではないのだから。

プロフィール

渡瀬 裕哉

国際政治アナリスト、早稲田大学招聘研究員
1981年生まれ。早稲田大学大学院公共経営研究科修了。 機関投資家・ヘッジファンド等のプロフェッショナルな投資家向けの米国政治の講師として活躍。日米間のビジネスサポートに取り組み、米国共和党保守派と深い関係を有することからTokyo Tea Partyを創設。全米の保守派指導者が集うFREEPACにおいて日本人初の来賓となった。主な著作は『日本人の知らないトランプ再選のシナリオ』(産学社)、『トランプの黒幕 日本人が知らない共和党保守派の正体』(祥伝社)、『なぜ、成熟した民主主義は分断を生み出すのか』(すばる舎)、『メディアが絶対に知らない2020年の米国と日本』(PHP新書)、『2020年大統領選挙後の世界と日本 ”トランプorバイデン”アメリカの選択』(すばる舎)

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

訂正マネタリーベース、国債買入減額で18年ぶり減少

ビジネス

テスラ、10月の英販売台数が前年比半減 欧州諸国で

ワールド

ジャマイカ、最強ハリケーン被害は現時点で60億-7

ビジネス

イーライリリーとノボ、薬価引き下げと保険適用拡大で
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に「非常識すぎる」要求...CAが取った行動が話題に
  • 4
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 5
    これをすれば「安定した子供」に育つ?...児童心理学…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 9
    「白人に見えない」と言われ続けた白人女性...外見と…
  • 10
    高市首相に注がれる冷たい視線...昔ながらのタカ派で…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story