コラム

トランプの扱いを巡って米国共和党の内紛は三国志状態へ

2021年02月27日(土)10時45分

全米保守行動会議(CPAC)で演説するドナルド・トランプ・ジュニア REUTERS/Joe Skipper

<全米の保守派が一堂に会する全米保守行動会議(CPAC)が行われているが、共和党保守派内の分裂を象徴するイベントとなった...... >

この原稿執筆時点(2月27日)、フロリダ州で全米の保守派が一堂に会するConservative Political Action Conference(CPAC:全米保守行動会議)が開催されており、28日のメインイベントとしてトランプ前大統領の演説が行われる予定となっている。同会議は年一度開催される政治的なビックイベントとして、共和党保守派にとって「重要視されてきた」催しである。

しかし、この保守派イベントはトランプ政権誕生後に徐々にトランプ派に乗っ取られてしまい、今となっては米国共和党保守派内の分裂を象徴するイベントとなってしまったように見える。

筆者も共和党保守派に親近感を抱き10年前から同イベントに参加しているが、トランプと一定の距離がある保守派の人々はスピーカーから外れており、政治的な意義を大きく毀損した今年のCPACに参加するモチベーションは完全に失われた。同イベントの重要性を日本に伝え続けてきた身としては些か残念な顛末である。

トランプ前大統領の取り扱いの相違で三つ巴の内紛状態に

現在、共和党内部は「三国志」とも言える三つ巴の内紛状態に突入している。内紛の焦点はトランプ前大統領の取り扱いの相違である。

共和党を構成する3つのグループは下記の通り。

(1)主流派(反トランプ派)

政治的に穏健な主張を有しており、民主党側とも妥協を図ることもできるグループ。米国で分断が深刻化する以前、共和党内で強い影響力を持ち続けてきた。政財界人脈を利用する政治力が強いが、党内予備選挙に勝ち抜くための草の根団体の力を持っていない。

ブッシュ親子は主流派に属する大統領であり、現在ではロムニー上院議員が同グループを代表する政治家と言える。

同グループは連邦上下両院でトランプ弾劾に賛成した議員を中心とした勢力と言い換えても良い。次期大統領選挙の候補者としては、ラリー・ホーガン・メリーランド州知事を擁する。

(2)レーガン保守派

減税推進、銃規制反対、中絶反対などの保守的なイデオロギーを持つ草の根団体に支えられたグループ。中心メンバーはレーガン時代に青春を過ごした保守派として思想基盤を持つ人々である。

2016年大統領選挙では主流派ではないアウトサイダーであったトランプを利用し、自らの政治的主張を実現するための政治的な神輿として担いだ経緯がある。一定の政治力や強力な草の根団体の力を有しているが、トランプ派による浸食の副作用によって自らのアイデンティティの再構築を模索せざるを得なくなっている。

トランプ自体を明確に否定することはできず、トランプ政権の政策的成果を誇りながら、トランプから徐々に距離を取る仕草を見せている。次期大統領選挙の候補者として、ペンス副大統領やニッキー・ヘイリー元国連大使を擁する。

プロフィール

渡瀬 裕哉

国際政治アナリスト、早稲田大学招聘研究員
1981年生まれ。早稲田大学大学院公共経営研究科修了。 機関投資家・ヘッジファンド等のプロフェッショナルな投資家向けの米国政治の講師として活躍。日米間のビジネスサポートに取り組み、米国共和党保守派と深い関係を有することからTokyo Tea Partyを創設。全米の保守派指導者が集うFREEPACにおいて日本人初の来賓となった。主な著作は『日本人の知らないトランプ再選のシナリオ』(産学社)、『トランプの黒幕 日本人が知らない共和党保守派の正体』(祥伝社)、『なぜ、成熟した民主主義は分断を生み出すのか』(すばる舎)、『メディアが絶対に知らない2020年の米国と日本』(PHP新書)、『2020年大統領選挙後の世界と日本 ”トランプorバイデン”アメリカの選択』(すばる舎)

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

中国、エヌビディアが独禁法違反と指摘 調査継続

ワールド

トルコ裁判所、最大野党党首巡る判断見送り 10月に

ワールド

中国は戦時文書を「歪曲」、台湾に圧力と米国在台湾協

ビジネス

無秩序な価格競争抑制し旧式設備の秩序ある撤廃を、習
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 3
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人に共通する特徴とは?
  • 4
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 8
    【動画あり】火星に古代生命が存在していた!? NAS…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story