コラム

バイデン時代に対応し、菅政権は「民主主義サミット」開催を支援せよ

2020年12月01日(火)15時00分

アジア太平洋地域の安定、対中抑止に繋がることは自明

同サミットが日米同盟、アジア太平洋地域の安定、そして対中抑止に繋がることは自明だ。強い交渉力を有する民主主義国の枠組みが構築されることは、非民主的な政権が幅を利かせる既存国際機関などに対しても正の影響をもたらすことにもなる。

日本は世界3位の経済大国であり、自由主義・民主主義国でもある。したがって、菅政権はバイデン政権とともに同サミットを主導する立場であることは言うまでもない。むしろ、同サミット開催に向けた日本政府の立場は極めて強く、上述の参加国・参加組織の選定などにも強い影響力を持つことすら可能だろう。

したがって、菅政権は当面は同サミットの開催に関して、バイデン政権が前言を撤回し、二の足を踏まないようにしっかりとアシストすることが重要となる。その上で、その開催国を「日本」または「インド」にするように外交的な影響力を行使するべきだ。

「日本」で開催すべき理由、「インド」で開催すべき理由

日本で第一回民主主義サミットを開催する理由は明確だ。日本が同枠組みのイニシアティブを取ることによって、バイデン政権が対中接近を行うことをけん制すること、欧州諸国や東南アジア諸国などとの第三グループを形成することに資するからだ。この枠組みを主導することは強力な対中交渉力を手にすることを意味する。

インドで開催する理由はクアッドの一角を成すインドのモディ政権に国内政治改革の大義名分を与えることになるからだ。バイデン政権はインドの人権問題などにセンシティブであり、両国間の隙間風が吹く可能性がある。そのため、バイデン政権とモディ政権が手打ちをする場をアレンジすることの日本の外交・安全保障上のメリットは極めて大きい。

以上のように、世界は既にバイデン政権を見据えた動きを本格化させつつある。日本も同戦略環境下において、自らの影響力を最大化し、自由主義・民主主義体制の勝利に向けた取り組みにまい進することが望まれる。

プロフィール

渡瀬 裕哉

国際政治アナリスト、早稲田大学招聘研究員
1981年生まれ。早稲田大学大学院公共経営研究科修了。 機関投資家・ヘッジファンド等のプロフェッショナルな投資家向けの米国政治の講師として活躍。日米間のビジネスサポートに取り組み、米国共和党保守派と深い関係を有することからTokyo Tea Partyを創設。全米の保守派指導者が集うFREEPACにおいて日本人初の来賓となった。主な著作は『日本人の知らないトランプ再選のシナリオ』(産学社)、『トランプの黒幕 日本人が知らない共和党保守派の正体』(祥伝社)、『なぜ、成熟した民主主義は分断を生み出すのか』(すばる舎)、『メディアが絶対に知らない2020年の米国と日本』(PHP新書)、『2020年大統領選挙後の世界と日本 ”トランプorバイデン”アメリカの選択』(すばる舎)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

企業向けサービス価格3月は2.3%上昇、年度は消費

ビジネス

スポティファイ、総利益10億ユーロ突破 販促抑制で

ビジネス

欧州委、中国のセキュリティー機器企業を調査 不正補

ビジネス

TikTok、簡易版のリスク評価報告書を欧州委に提
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 3

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 4

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 5

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 6

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 7

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 8

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 10

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story