コラム

トランプvsバイデン、どちらが世界に戦争をもたらす可能性があるのか

2020年06月12日(金)16時30分

つまり、トランプ政権はほとんど戦争に繋がる行動をしていないどころか、実際には自国に対して強硬な姿勢を示す敵対勢力との間で、「力の担保」を持った上で、キーパーソンの更迭も辞さず、柔軟で粘り強い対話を行っている。

トランプ大統領のように独裁者・権威主義者と対話・交渉することで、力の現実の中で妥協点を見出していくことは、人権問題などの観点から極めて問題があるアプローチだろう。世界の自由主義社会のリーダーたる米国にとっては戦争・紛争の惨事を避けるための苦渋の選択だったように思う。

正しさは常に平和とともにあるわけではない

一方、バイデン元副大統領が政権を担うことになればどうなるだろうか。選挙戦を通じてバイデンの外交・安全保障政策はいまだ全体像が見えてこない。ただし、バイデン元副大統領自身がForeign Affairsに寄稿した論文を読む限り、筆者は一抹の不安を感じざるを得ない。

同論文の中でバイデン氏は就任1年目に(1)政府腐敗との闘い、(2)権威主義からの防衛、(3)自国及び外国での人権の促進という3つのコミットメントを引き出す民主国家のためのグローバルサミットの開催を明言している

筆者はその趣旨に何ら異論はない。そして、バイデン元副大統領が述べているように、日本を含めた同盟国とその取り組みを進めていくことは政治的に正しい方向性だろう。しかし、正しさは常に平和とともにあるわけではない。

バイデン元副大統領はトランプ政権が軍事費を増加させることで再建した米軍をどのように運用するのだろうか。トランプ政権下で干されていたネオコン勢力が復活し、価値観による外交・安全保障を復活させた場合、その正しさは新たな戦渦を生み出す可能性が存在している。我々日本人はその戦渦がもたされる場所が中東ではなく東アジア・東南アジアになることも十分に想定するべきだろう。

トランプ政権は良かれ悪しかれ戦争や紛争を巻き起こすほど十分な軍事力や外交力を持つことはできなかった。しかし、仮にバイデン政権が誕生した場合、それらを作り出すだけの軍事力は既に回復しており、それらを正当化する「政治的な正しさ」も存在している。

もちろん戦時大統領以外は「戦争」を明言する大統領候補者は存在しない。筆者はバイデン元副大統領、そして民主党が持つ同盟国と歩調を合わせた敵対国への非妥協的なアプローチは、敵対国との偶発的な衝突を発生させるのではないかと危惧している。バイデン政権下において、戦争や紛争による惨事を回避するために、我々が何をできるかを真剣に考えるべきだろう。

プロフィール

渡瀬 裕哉

国際政治アナリスト、早稲田大学招聘研究員
1981年生まれ。早稲田大学大学院公共経営研究科修了。 機関投資家・ヘッジファンド等のプロフェッショナルな投資家向けの米国政治の講師として活躍。日米間のビジネスサポートに取り組み、米国共和党保守派と深い関係を有することからTokyo Tea Partyを創設。全米の保守派指導者が集うFREEPACにおいて日本人初の来賓となった。主な著作は『日本人の知らないトランプ再選のシナリオ』(産学社)、『トランプの黒幕 日本人が知らない共和党保守派の正体』(祥伝社)、『なぜ、成熟した民主主義は分断を生み出すのか』(すばる舎)、『メディアが絶対に知らない2020年の米国と日本』(PHP新書)、『2020年大統領選挙後の世界と日本 ”トランプorバイデン”アメリカの選択』(すばる舎)

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