コラム

なぜイスラマバードのモスクは狙われたのか?――消去法で浮かぶ「イスラム国」の必然性

2026年02月17日(火)11時25分

また、バルチスタン解放軍(BLA)に至っては、その性質はさらに根本から異なる。BLAは宗教国家の樹立を目的とする宗教的過激勢力ではなく、南西部バルチスタン州の分離独立と資源の自決権を掲げる世俗的な民族主義組織である。

彼らが銃口を向けるのは、バルチスタンの資源を搾取するとみなすパキスタン中央政府、および一帯一路構想の下で巨大な経済権益を拡大させる中国である。

近年、BLAはグワダル港付近での中国人労働者や治安部隊を狙った極めて精緻なテロを繰り返しているが、彼らにとって宗派間の対立は活動の範疇にはない。シーア派を異端として殺戮する動機は、彼らの掲げる民族解放という大義の中には一辺の合理性も見当たらないのである。

このように、各武装組織の現在の戦略と行動原理を消去法で分析すれば、犯行声明が出る以前から、イスラム国関連組織の実行である可能性が極めて高いことは自明であったと言える。イスラム国は、TTPが政治的配慮から避けるようになった宗派間の憎悪という火種をあえて煽ることで、地域の不安定化を狙っている。

プロフィール

和田 大樹

CEO, Strategic Intelligence Inc. / 代表取締役社長
専門分野は国際安全保障論、国際テロリズム論、経済安全保障、地政学リスクなど。海外研究機関や国内の大学で特任教授や非常勤講師を兼務。また、国内外の企業に対して地政学リスク分野で情報提供を行うインテリジェンス会社の代表を務める。

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