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なぜイスラマバードのモスクは狙われたのか?――消去法で浮かぶ「イスラム国」の必然性
イスラム国によるシーア派への敵意は、一貫した行動原理に基づいている。近年もイラン国内で発生した大規模な自爆テロや、アフガニスタンを拠点とする「イスラム国ホラサン州(ISK)」が繰り返してきた同国の少数派ハザラ族(シーア派)への残虐な攻撃は、その典型的なケースである。
彼らの論理では、シーア派を攻撃することは宗教的な義務であり、聖域であるはずのモスクでの無差別殺戮も、彼らの歪んだ正義の下では「神への奉仕」として正当化される。今回のイスラマバードでの事件も、その延長線上にある冷徹な計算に基づいた犯行だったと考えられる。
変質するTTPと世俗的なBLA 消去法で見える犯行組織
対照的に、パキスタンの他の主要武装勢力であるTTPやBLAの動向を論理的に分析すれば、彼らが今回の事件に関与した可能性は極めて低いことが浮かび上がる。
まず、TTPは確かにスンニ派過激思想を背景に持ち、過去にはシーア派を狙った凄惨なテロを実行してきた歴史を持つ。
しかし、2018年にヌール・ワリ・メスードが指導者の座に就いて以降、組織の戦略は劇的なパラダイムシフトを遂げた。メスードは、無差別な民間人攻撃や宗派間テロがパキスタン国民の広範な離反を招き、組織をイスラム国と同列の「国際的なテロ集団」として孤立させることを強く警戒した。
その結果、TTPは今日、「標的をパキスタン軍や警察、政府機関といった国家の権益に絞る」という方針を明確に打ち出している。彼らの主眼はあくまでパキスタン政府の打倒と自らの統治基盤の確立にあり、戦略的価値が低く、かつ国際社会の非難を浴びやすい民間人の襲撃は、現在のTTPの政治的論理には合致しないのである。
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