コラム

日本は四季から「二季」へ? 人生の「青春」も「白秋」も季節の風物詩も失われつつある?

2023年07月01日(土)12時00分
周来友(しゅう・らいゆう)(経営者、ジャーナリスト)
梅雨

BEE32/ISTOCK

<梅雨の季節に思う、日本の季節と暮らしに迫る「変化」。中国では人生を春夏秋冬になぞらえて「青春」「朱夏」「白秋」「玄冬」に区分けする>

東京も梅雨に入り、この原稿を書いている今日も窓の外ではじとじとと雨が降っている。春夏秋冬、そして梅雨。日本の暮らしは季節の移ろいと共にある。

だが最近は温暖化の影響なのか、春と秋が短くなり、「二季」になりつつあるとも言われている。果たして日本の四季はどうなるのだろうか。

梅雨と言えば思い出すのは、初来日した1987年のこと。成田に着いたのは春分の日で、3月下旬から半年ほど東池袋に程近い大塚の安藤荘という安アパートに住んでいた。風呂なし、トイレ共同、当然エアコンもない。大家さんに「中国にも梅雨はある?」と聞かれ、「あります。慣れているので大丈夫」。そう答えた記憶がある。

広大な領土ゆえ、もちろん全土ではないが中国にも梅雨はある。南部から東部の長江下流域にかけて梅雨前線が張り、日本と同じ時期に恵みの長雨が降る。幼少期を過ごした浙江省も例外ではなく、しかもその時期は梅の成熟期。地域の特産である楊梅(ヤマモモ)は甘酸っぱくとてもおいしいので、少年の私にとって、梅雨はむしろ待ち遠しい季節だった。

しかし実際に経験してみると、日本の梅雨は想像以上だった。じめじめとした湿気は中国以上。来日当初は洗濯機もなく、服も数着だけ。毎日汗まみれなのに、節約のため銭湯に行くのも3日に1回程度だったので、なんともつらい毎日だった。

そんな長雨の季節に、70代の大家のおばあさんから紫陽花の切り花を頂いた。空き缶に差して飾ったその紫陽花(あじさい)にどれほど励まされたことか。お世話になった大家さん、さすがにもう亡くなってしまっただろうか......。

ご存じの方も多いと思うが、「梅雨」という言葉は中国から日本に伝わった。

季節に関わる言葉は中国に起源があるものが多い。春分、夏至、秋分、冬至など、一年の暦を24に分ける「二十四節気(にじゅうしせっき)」も紀元前、中国で考え出された概念だ。中国にはほかにも四季に関わるさまざまな概念や表現があり、神話に基づいた次のような属性もある。

 春=色は、方角は、四神は青龍
 夏=色は、方角は、四神は朱雀(すざく)
 秋=色は、方角は西、四神は白虎
 冬=色は、方角は、四神は玄武
(四神とは天の方角をつかさどる霊獣)

さらには人生を春夏秋冬になぞらえて、それぞれ「青春」「朱夏」「白秋」「玄冬」と呼んだりもする(玄は黒の意味)。冬に始まり、秋に終わる人生。草木が成長する春が若者たちの季節だ。15~29歳が「青春」とされ、日本では4つのうちこの言葉だけが定着した。

プロフィール

外国人リレーコラム

・石野シャハラン(異文化コミュニケーションアドバイザー)
・西村カリン(ジャーナリスト)
・周 来友(ジャーナリスト・タレント)
・李 娜兀(国際交流コーディネーター・通訳)
・トニー・ラズロ(ジャーナリスト)
・ティムラズ・レジャバ(駐日ジョージア大使)

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

韓国製造業PMI、4月は約2年半ぶりの低水準 米関

ワールド

サウジ第1四半期GDPは前年比2.7%増、非石油部

ビジネス

カタールエナジー、LNG長期契約で日本企業と交渉

ビジネス

アップル、関税で4─6月に9億ドルコスト増 自社株
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 7
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 8
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 9
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 10
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story