コラム

「密輸」中国製ワクチンを打つ日本の富裕層... 自己中だらけでコロナに勝てるの?

2021年01月20日(水)20時30分
周 来友(しゅう・らいゆう)

ISSEI KATO-REUTERS

<緊急事態宣言が出されたが、政治家も国民も真剣さが足りないのではないか。中国では今も強権的な手段で感染を封じ込めており、それはそれでごめんこうむりたいが、日本のやり方にも疑問がある>

2度目の緊急事態宣言が出された。だが、これで感染拡大を封じ込められるのだろうか。政治家も国民も真剣さが足りないように思う。

国民には不要不急の外出を控えるよう求めておきながら、「4人以下で、午後8時まで」という会食ルールを作ろうとしていた国会議員のセンセイたち。

そして以前ほど「緊急事態」を深刻に捉えず、外出をやめない人々。実際、1回目の緊急事態宣言時と比べ、夜の銀座でも通勤時間帯の品川でも人出の減りが鈍い。

「そうは言っても、家に閉じ籠もってばかりいられない」という人の気持ちは痛いほどよく分かる。私はジャーナリストだが、社員を抱える経営者でもあるからだ。経済はどんどん悪化しており、特に中小企業には厳しい。

正直に言うと、最近は新型コロナウイルスより自分のビジネスが心配なぐらいだ。担当編集者との打ち合わせでも、つい暗い話題になってしまう。

これは緊急事態宣言の発令前だが、1月1日に毎日新聞が興味深いニュースを報じていた。中国からシノファーム社のコロナワクチンが「密輸」され、大企業15社のトップとその家族ら計18人がそのワクチンを接種していたという。

自分一人ワクチンを打ったところで経済は回復しないし、おまけに日本では未承認の中国製ワクチン。私には理解できない行為だが、何でもいいからすがりたい心境だったのだろう。

このニュースは中国でも話題になった。中国製ワクチンを打つなんてバカじゃないか、というわけだ。日本人の大半は中国製を信頼していないが、それは中国人も同じ。ただ、最近は日本で中国の技術大国ぶりが知られるようになってきたからか、中国製ワクチンの品質に不安を抱かない日本人もいるようだ。

確かに中国はテクノロジーを駆使し、新型コロナウイルスを封じ込めたというイメージがある。だがその対策にしても、まだまだ信頼には値しない。

日本ではあまり報じられていないだけで、今も中国ではあちこちで感染者が出ている。政府が隠蔽しているわけではないが、すぐに外部との接触を遮断するため目立っていないだけだ。

大連では感染者が出たマンションの1階入り口を、当局の人間が外から溶接し、住人が出入りできないようにした。遼寧省ではとある銭湯で感染者が出るや、その場にいた客全員が有無を言わさず、そのまま隔離されてしまった(さすがに服は着せてもらえたようだが)。

強権的な手段で感染を封じ込めているのが実態だ。

プロフィール

外国人リレーコラム

・石野シャハラン(異文化コミュニケーションアドバイザー)
・西村カリン(ジャーナリスト)
・周 来友(ジャーナリスト・タレント)
・李 娜兀(国際交流コーディネーター・通訳)
・トニー・ラズロ(ジャーナリスト)
・ティムラズ・レジャバ(駐日ジョージア大使)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウクライナ、防空強化でG7の協力要請 NATOが取

ビジネス

米指数ファンドからブラックリスト中国企業に多額資金

ワールド

イスラエルの長期格付け、「A+」に引き下げ=S&P

ビジネス

仏ロレアル、第1四半期売上高は9.4%増 予想上回
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の衝撃...米女優の過激衣装に「冗談でもあり得ない」と怒りの声

  • 3

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 4

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 5

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 6

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 9

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 10

    ヨルダン王女、イランの無人機5機を撃墜して人類への…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story