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トランプの戦争でイランが核武装する皮肉

A More Hard-Line Iran

2026年3月27日(金)16時00分
トム・オコナー (本誌米国版外交担当副編集長)
2008年にイランのアハマディネジャド大統領(当時)が視察した同施設 IRANIAN PRESIDENTIAL OFFICIAL WEBSITEーREUTERS

2008年にイランのアハマディネジャド大統領(当時)が視察した同施設 IRANIAN PRESIDENTIAL OFFICIAL WEBSITEーREUTERS

<米・イスラエルの攻撃で追い詰められた現体制は、非核の「ファトワ」を捨てて核開発に突き進む?>


▼目次
ウラン濃縮は交渉材料
アメリカの重大なミス

絶対にイランの核武装を阻止する。それがイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相と一緒に始めた今回の戦争の目的だ──米大統領ドナルド・トランプは繰り返し、そう主張してきた。しかし現体制が今回の戦争を生き延びた場合、イランはまさに核武装へと突き進む可能性が高い。

あの国に30年以上も君臨してきた最高指導者アリ・ハメネイは開戦初日の2月28日に、米イスラエル連合軍の爆撃で殺害された(直系親族の多くも道連れになった)。後継者には息子のモジタバが選ばれたが、その動静や所在は3月半ばの時点でも不明なまま。ちなみにトランプは、モジタバが既に死んでいる可能性にも言及している。

しかし彼の名で発表された声明は激烈かつ復讐心に燃えたものだ。額面どおりに受け取れば、この男は父親以上に強硬で、中東だけでなく世界全体の安全を脅かす方向に一歩を踏み出しかねない。

故ハメネイはかつて核兵器の製造や保有を禁ずるファトワ(宗教令)を出したとされ、イラン政府はそれを根拠に核兵器開発の意図を否定してきた。しかし息子のモジタバには、今や父のファトワを覆す権限があり、そうしたい動機もある。

善くも悪くも「ハメネイは慎重な男で、リスクの高い決定はしなかった」。そう本誌に語ったのはイスラエル国家安全保障研究所(INSS)で「イランとシーア派の枢軸研究プログラム」を率いるラズ・ジムトだ。「しかし新しい指導部は勇んでリスクを取るかもしれない」

現時点でイランの「体制転換は期待しにくい」とみるジムトによれば、問題は「戦争終結後のイランに核分裂物質を使用する能力があるかどうか」だ。「あの国には今も400~450キロの濃縮ウランがある。その濃縮度を60%から90%に高め、金属ウランに転換し、武器化する......。モジタバならやりかねない。それが最悪の展開だ」

そもそもイランの核開発は1979年のイスラム革命より20年以上も前に始まっている。1953年にCIAの画策したクーデターで親米派のパーレビ国王が復権すると、アメリカ政府は「原子力平和利用」プログラムを通じ、同盟国たるイランに原子力発電の技術を供与した。

このプログラムで原子炉をもらったイスラエルとパキスタンは今、どちらも核兵器を保有している(イスラエル政府は公式には認めていない)。

79年のイスラム革命を機に、イランは反米路線に転じた。しかし初代最高指導者のルホラ・ホメイニは原子力を嫌っていたし、80年代の対イラク戦争で疲弊した国には核開発の余力も技術もなかった。

しかし89年にホメイニが死去し、アリ・ハメネイが後継者になると事態が動いた。ロシアや中国からの支援もあったが、パキスタンで「核開発の父」と称された故アブドル・カディル・カーンの協力が大きかった。

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