なぜプーチンは歴史を語り続けるのか...「日本史もよく勉強している」
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<権力者にとっての歴史とは? ウクライナ侵攻を支える思想の原点について>
自らの内面をほとんど語らない男の思考を、これまで発表してきた論文や演説からどのように読み解くことができるのか...。駐ロシア大使を8年間務めた上月豊久氏による話題書『プーチンの歴史認識──隠された意図を読み解く』(新潮選書)より第1章を一部抜粋。
プーチン大統領にとって歴史の意味は何か
プーチンは子供の頃より歴史に強い関心を持ってきた。現在のプーチン大統領についても、ペスコフ大統領報道官が「プーチンは今でもずっと本を読んでいる。ほとんどがロシア史関連で、歴史的偉人の回顧録もよく読むようだ」と述べている(*1)。
また、2005年にプーチン大統領が訪日した際に、在京ロシア大使館のある外交官は私に、「プーチン大統領が日本の歴史をよく勉強しているのに驚かされた」と言っていた。
しかも、プーチン大統領は単なる歴史好きではない。彼は歴史から多くを学び、そこから統治のための基本理念を引き出しており、また、彼にとって歴史は政治の道具そのものである。
彼は、2024年5月7日の5期目の大統領就任式のスピーチの中で、「国内の不安定と障害によって巨大な対価をはらったことを忘れてはならない」と述べた(*2)。これは過去の「巨大な対価」が将来の指針となることを意味する。
あるいは戦勝記念日の演説では、「決して忘れてはならない犠牲」という表現がしばしば使われるが、この後には「歴史の教訓は次世代への道標である」、そして「我々の未来は、この偉大な犠牲の上にある」という表現が続く。
彼は、過去の歴史の教訓に自分の統治の基本理念を見出し、それを国民に示しているのである。プーチン大統領が歴史をいかに重視し、これを利用しているかについては好例がある。






