最新記事
BOOKS

日本人の「休むと迷惑」という罪悪感は、義務教育が生み出した...なぜ「欠席」は罪になったか

2025年12月27日(土)11時35分
印南敦史 (作家、書評家)

いつの間にか休まない日本社会が出来上がった

これは、自身の小学生時代を振り返ってみても納得できる話だ。「義務教育だから行かなくてはいけない」というような主張は親や教師から聞いてきたし、私も「行かなくてはいけないのは『間違いない』けれど、そこをかいくぐってなんとか休めないものか」と企んでいたりした。

「行かなくてはいけない」という発想が、休むことの大前提としてあったわけである。

いま考えればおかしいことだが、そういう偏った価値観の弊害は、現代にまで及んでいるようだ。


「毎日学校に行くことは良いこと」という強い光は、「具合が悪くても学校を休まない」という影を生み出してきました。そして、皆勤賞があって、毎日学校に行くことが良いことで、多少具合が悪くても休まないことが誉められるならば、入学試験や国家試験でさえ具合が悪くても受験する状態が当たり前になってしまいます。そして、自分が休むと「迷惑をかける」という感情を伴って、いつの間にか休まない日本社会が出来上がってしまったと私は考えています。(125ページより)

だとすれば、「休んではいけない学校教育」を受けた子どもたちが、社会に出て働き出したとき、「具合が悪くても休まない」「休むと迷惑をかける」(=だから休めない)と考えてしまうのはある意味で当然の話だ。

だから、有給休暇の消化すら躊躇してしまうほど無理をして働くようになってしまったのではないかと著者は考えるのである。

強く共感できる話であり、冒頭で触れた「働き方改革」を阻むような意識を学校教育が植えつけてきたという現実は、今こそ考え直してみるべきことではないかとも感じる。


『「休むと迷惑」という呪縛――学校は休み方を教えない』
「休むと迷惑」という呪縛――学校は休み方を教えない
 保坂 亨・著
 平凡社新書

(※リンクをクリックするとアマゾンに飛びます)


【データが語る異次元の人手不足】外国人+AI活用でも厳しいが労働規制緩和は愚策...低生産性の戦犯は「うるさい社会」
【AI浸透で「人余り」加速】余剰化するホワイトカラーの行方/40代は影響もろに/日本でも26年以降に本格化か


[筆者]
印南敦史
1962年生まれ。東京都出身。作家、書評家。広告代理店勤務時代にライターとして活動開始。他に、ライフハッカー[日本版]、東洋経済オンライン、サライ.jpなどで連載を持つほか、「ダ・ヴィンチ」などにも寄稿。『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』(日本実業出版社)、『この世界の中心は、中央線なのかもしれない。』( 辰巳出版)など著作多数。2020年6月、日本一ネットにより「書評執筆本数日本一」に認定された。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

プーチン氏、戦争継続へ有力実業家に資金要請報道 自

ワールド

訂正-トランプ氏のガザ和平案、8カ月でハマス武装解

ワールド

米上院、国土安全保障省への資金法案可決 ICEは除

ワールド

中国、米通商慣行の対抗調査開始 即時の報復回避
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:BTS再始動
特集:BTS再始動
2026年3月31日号(3/24発売)

3年9カ月の空白を経て完全体でカムバック。世界が注目する「BTS2.0」の幕開け

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 2
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊張緩和の兆しか
  • 3
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終回に世界中から批判殺到【ネタバレ注意】
  • 4
    「俺たちはただの人間だ」――BTSが新アルバム『ARIRAN…
  • 5
    まずサイバー軍が防空網をたたく
  • 6
    親の遺産はもう当てにできない? ベビーブーム世代…
  • 7
    意外と「プリンス枠」が空いていて...山崎育三郎が「…
  • 8
    デンマーク王妃「帰郷」に沸騰...豪州訪問で浮かび上…
  • 9
    「予想よりも酷い...」ドラマ版『ハリー・ポッター』…
  • 10
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 1
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公開...母としての素顔に反響
  • 2
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ海峡封鎖と資源価格高騰が業績を押し上げ
  • 3
    「マツダ・日産・スバル」が大ピンチ?...オーストラリアの「NVES規制」をトヨタが切り抜けられた理由
  • 4
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 5
    レストラン店内で配膳ロボットが「制御不能」に...店…
  • 6
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」…
  • 7
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反…
  • 8
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する…
  • 9
    中国の公衆衛生レベルはアメリカ並み...「ほぼ国民皆…
  • 10
    イランは空爆により核・ミサイル製造能力を「喪失」…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中