日本人の「休むと迷惑」という罪悪感は、義務教育が生み出した...なぜ「欠席」は罪になったか
いつの間にか休まない日本社会が出来上がった
これは、自身の小学生時代を振り返ってみても納得できる話だ。「義務教育だから行かなくてはいけない」というような主張は親や教師から聞いてきたし、私も「行かなくてはいけないのは『間違いない』けれど、そこをかいくぐってなんとか休めないものか」と企んでいたりした。
「行かなくてはいけない」という発想が、休むことの大前提としてあったわけである。
いま考えればおかしいことだが、そういう偏った価値観の弊害は、現代にまで及んでいるようだ。
「毎日学校に行くことは良いこと」という強い光は、「具合が悪くても学校を休まない」という影を生み出してきました。そして、皆勤賞があって、毎日学校に行くことが良いことで、多少具合が悪くても休まないことが誉められるならば、入学試験や国家試験でさえ具合が悪くても受験する状態が当たり前になってしまいます。そして、自分が休むと「迷惑をかける」という感情を伴って、いつの間にか休まない日本社会が出来上がってしまったと私は考えています。(125ページより)
だとすれば、「休んではいけない学校教育」を受けた子どもたちが、社会に出て働き出したとき、「具合が悪くても休まない」「休むと迷惑をかける」(=だから休めない)と考えてしまうのはある意味で当然の話だ。
だから、有給休暇の消化すら躊躇してしまうほど無理をして働くようになってしまったのではないかと著者は考えるのである。
強く共感できる話であり、冒頭で触れた「働き方改革」を阻むような意識を学校教育が植えつけてきたという現実は、今こそ考え直してみるべきことではないかとも感じる。

『「休むと迷惑」という呪縛――学校は休み方を教えない』
保坂 亨・著
平凡社新書
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[筆者]
印南敦史
1962年生まれ。東京都出身。作家、書評家。広告代理店勤務時代にライターとして活動開始。他に、ライフハッカー[日本版]、東洋経済オンライン、サライ.jpなどで連載を持つほか、「ダ・ヴィンチ」などにも寄稿。『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』(日本実業出版社)、『この世界の中心は、中央線なのかもしれない。』( 辰巳出版)など著作多数。2020年6月、日本一ネットにより「書評執筆本数日本一」に認定された。





