最新記事
韓国政治

日中対立の狭間で揺れる韓国 ── 李在明の「二股外交」は成功するか

2025年12月24日(水)19時15分
佐々木和義

台湾有事は対岸の火事

韓国が最も避けたい状況は中国との対立だ。韓国は日本と同様、米国の同盟国で、北大西洋条約機構(NATO)のグローバルパートナーに名を連ねている。紛争が中台や日中といった二国間にとどまるなら傍観できるだろうが、米国が参戦すれば協力せざるを得なくなり、NATO加盟国が加わると韓国への参戦圧力はさらに強まることになる。

中国は尖閣諸島や南沙諸島の領有権を主張して関係国に軍事的圧力をかけるが、中国軍の弱点に太平洋進出がある。東シナ海は日本、台湾、フィリピンの領海とEEZ(排他的経済水域)に塞がれており、南シナ海もフィリピン、ベトナム、マレーシアの領海とEEZに阻まれている。太平洋までの距離が最も短いのが台湾だ。米軍が沖縄の基地から台湾を支援する場合、尖閣海域が最も有力な通り道となる。とはいえ日本は台湾有事を看過できないが、韓国には対岸の火事である。

ビザ免除で中国人観光客が激増したが......

中国人観光客で賑わうソウルの明洞

中国人観光客で賑わうソウルの明洞(撮影=筆者)

韓国政府は9月29日、中国人団体旅行者へのビザ免除を開始した。対象は旅行会社が集客した3人以上の団体で、最大15日間、2026年6月30日までの時限措置だが、大韓商工会議所文化観光産業委員会は延長を求めている。新世界免税店明洞店はビザ免除開始から1カ月間の中国人来店数が前年同期と比べて90%増え、売り上げも50%増加した。免税店以外にも路面店は49.6%、大型ショッピングモールと百貨店も39%前年を上回り、なかには9900%増を記録したコンビニエンスストアもあるなど韓国観光業界は中国特需に湧いている。

ただ、その一方で反中デモも頻発している。中国人居住区として知られるソウル永登浦区の大林(デリム)地区や中国人観光客で賑わう明洞などでは「ノーチャイナ」が広がりを見せている。京畿道知事時代に「ノージャパン」を推進した李在明大統領は、特定国を侮辱する集会は国益と国のイメージを損なうとして反中デモを非難した。在韓中国大使館は韓国を訪れる自国民にデモへの注意を喚起してルールを守るよう呼びかけている。

反中デモが活発化するなか、訪韓台湾人旅行者の間で「台湾人バッジ」の需要が高まっているという。「台湾人です」というハングル表記と台湾国旗が描かれており、バッジをつけたら店員の対応が変わったという旅行者もいるほどだ。

ビジネス
「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野紗季子が明かす「愛されるブランド」の作り方
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

EU・仏・独が米国非難、元欧州委員らへのビザ発給禁

ワールド

ウクライナ和平の米提案をプーチン氏に説明、近く立場

ワールド

パキスタン国際航空、地元企業連合が落札 来年4月か

ビジネス

中国、外資優遇の対象拡大 先進製造業やハイテクなど
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足度100%の作品も、アジア作品が大躍進
  • 2
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者・野村泰紀に聞いた「ファンダメンタルなもの」への情熱
  • 3
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これまでで最も希望が持てる」
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 6
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 7
    ゴキブリが大量発生、カニやロブスターが減少...観測…
  • 8
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 9
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 10
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 9
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 10
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中