若者から中高年まで ── 韓国を襲う「自殺の連鎖」が止まらない

ストレスは子供や教師をも追い詰めて
韓国は出身大学が就職や就職後の出世など人生を左右する傾向が強い。そのため小中高校生の中にはSKYと呼ばれるソウル大学、高麗(コリョ)大学、延世(ヨンセ)大学など、一流大学への進学を強要される者も多い。学校の授業が終わると深夜まで学習塾をハシゴし、帰宅後も塾の宿題に追われる生活を送り、過度なストレスがいじめにつながることもある。
子供たちだけでなく、教師もストレスから極端な選択を選ぶことがある。なかでも痛ましい事件は、小学校教師が児童を道連れに自殺を図ったというものだ。今年2月10日、大田(テジョン)市の小学校で40代の女性教師が1年生の女児を刃物で殺害し、自らも自殺を図ったのだ。18年からうつ病の治療を受けていた女性教師は学校近くのスーパーで刃物を購入、1年生の女児に本を渡すと言って聴覚室に誘い入れて殺害した。
2人を発見した同僚教師の通報で救急隊駆けつけたが女児は死亡。一命を取り留めた女性教師は集中治療室に入る前、「どの子でもかまわなかった」「一番最後に行く子を視聴覚室に入らせて殺害した」と供述した。
政府の対策と課題
韓国政府は2024年1月、分散していた自殺予防、青少年電話、女性緊急電話などを「109」に統合した。初年度の24年は18万2725件の相談に対応したが、相談員不足から半数近くがつながらなかったというデータもある。政府は100人体制から140人に増員し、2026年以降もさらに増員する計画だ。
OECDの2023年の報告書による韓国の生活満足度は6.06点(10点満点)で、加盟国平均の6.69点を下回り、加盟38カ国中33位となっている。生活満足度は所得が低い国ほど下がる傾向がある。
自殺対策の水際措置である「109」の拡充もさることながら、国民の生活環境が改善されない限り、自殺率ワースト1の汚名が返上されることはないだろう。






