最新記事
国境紛争

トランプが自賛する和平仲介は不完全...南カフカスで対立が再燃しかねない

New Era in the Caucasus

2025年9月2日(火)17時20分
ジェフリー・マンコフ(米国防大学国家戦略研究所・名誉フェロー)

アゼルバイジャンはアメリカとの戦略的パートナーシップを強化すれば、インフラ建設やエネルギー開発で多額の投資を誘致できる。

アリエフがさらに期待していることがある。米政府はアゼルバイジャンが23年の軍事作戦でアルメニア系住民を迫害したことを非難し、安全保障上の支援を中止した。これが再開されれば、アゼルバイジャンは強力な後ろ盾を得て地域のライバルであるロシアとイランに対抗できる。


アルメニアもアメリカとの防衛協力を強化できれば、90年代の第1次ナゴルノカラバフ紛争以来続いてきたアゼルバイジャン、トルコとの国境閉鎖を解除できる。

国境を開放すれば、アルメニアは長年自国を迂回していた南カフカスの通商・交通網に加われる。オスマン帝国末期からアルメニアはトルコと緊張関係にあったが、国境を越えた往来が盛んになれば関係改善は時間の問題だろう。

国境が開放されて寸断状態が解消されれば、南カフカスはヨーロッパとアジアを結ぶ魅力的な中継地になる。中国から中央アジア経由でヨーロッパに向かう「中央回廊」経由の貿易が拡大し投資が活発化すれば、さらに多くの恩恵がもたらされるはずだ。米政府は長期計画で中央回廊の整備を進めてきた。そのメリットは数々あるが、特にアメリカが狙うのは、ユーラシア大陸の旧ソ連圏の国々に対するロシアの影響力の低下だ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米ADP民間雇用、8月は5.4万人増 予想下回る

ビジネス

米の雇用主提供医療保険料、来年6─7%上昇か=マー

ワールド

ウクライナ支援の有志国会合開催、安全の保証を協議

ワールド

中朝首脳が会談、戦略的な意思疎通を強化
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:豪ワーホリ残酷物語
特集:豪ワーホリ残酷物語
2025年9月 9日号(9/ 2発売)

円安の日本から「出稼ぎ」に行く時代──オーストラリアで搾取される若者たちの実態は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニングをする女性、異変を感じ、背後に「見えたモノ」にSNS震撼
  • 2
    【動画あり】9月初旬に複数の小惑星が地球に接近...地球への衝突確率は? 監視と対策は十分か?
  • 3
    「見せびらかし...」ベッカム長男夫妻、家族とのヨットバカンスに不参加も「価格5倍」の豪華ヨットで2日後同じ寄港地に
  • 4
    「よく眠る人が長生き」は本当なのか?...「睡眠障害…
  • 5
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体…
  • 6
    Z世代の幸福度は、実はとても低い...国際研究が彼ら…
  • 7
    【クイズ】世界で2番目に「農産物の輸出額」が多い「…
  • 8
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 9
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動…
  • 10
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 1
    東北で大腸がんが多いのはなぜか――秋田県で死亡率が下がった「意外な理由」
  • 2
    1日「5分」の習慣が「10年」先のあなたを守る――「動ける体」をつくる、エキセントリック運動【note限定公開記事】
  • 3
    50歳を過ぎても運動を続けるためには?...「動ける体」をつくる4つの食事ポイント
  • 4
    25年以内に「がん」を上回る死因に...「スーパーバグ…
  • 5
    豊かさに溺れ、非生産的で野心のない国へ...「世界が…
  • 6
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
  • 7
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 8
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害…
  • 9
    首を制する者が、筋トレを制す...見た目もパフォーマ…
  • 10
    上から下まで何も隠さず、全身「横から丸見え」...シ…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大ベビー」の姿にSNS震撼「ほぼ幼児では?」
  • 4
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 5
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 6
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 9
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 10
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中