最新記事
国境紛争

トランプが自賛する和平仲介は不完全...南カフカスで対立が再燃しかねない

New Era in the Caucasus

2025年9月2日(火)17時20分
ジェフリー・マンコフ(米国防大学国家戦略研究所・名誉フェロー)

それでも和平合意の大まかな輪郭はかなり前から明らかになっていた。双方が互いの「領土の一体性」を認めること(ナゴルノカラバフのアゼルバイジャンへの帰属も含む)、国境を線引きし直し、国際法廷への訴訟を取り下げ、外交関係を正常化することだ。これらについてはおおむね合意がまとまったと、3月に発表されていた。今後両国はアメリカの仲介の下、交渉を重ねて細部を詰め、条約の草案を作成することになる。

現状では多くの問題が未解決のまま残されている。なかでもアゼルバイジャンがアルメニアに求めている2つの要求については、両国の主張は平行線をたどってきた。


地域の新時代が始まる

アゼルバイジャンはアルメニアの西隣に位置する自国の飛び地ナヒチェワンに向かう直通ルート(アルメニア領を横切ることになる)を確保したがっている。加えてアルメニアが憲法を改正してナゴルノカラバフの主権を完全に放棄することも求めている。

こうした問題が解決され、平和が実現すれば、地域の人々は大きな恩恵を受けるはずだ。アゼルバイジャンはナゴルノカラバフ問題に頭を悩まさずに済み、アルメニアはナヒチェワンに向かう回廊を押さえるためにアゼルバイジャンが攻撃を仕掛けてくる悪夢から解放される(米政府はここに「国際平和と繁栄のためのトランプ・ルート」と名付けた回廊を建設する計画を提案している)。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

スウェーデン、ウクライナに戦闘機「グリペン」輸出へ

ワールド

イスラエル首相、ガザでのトルコ治安部隊関与に反対示

ビジネス

メタ、AI部門で約600人削減を計画=報道

ワールド

イスラエル議会、ヨルダン川西岸併合に向けた法案を承
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺している動物は?
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 5
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 6
    汚物をまき散らすトランプに『トップガン』のミュー…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 9
    【クイズ】12名が死亡...世界で「最も死者数が多い」…
  • 10
    やっぱり王様になりたい!ホワイトハウスの一部を破…
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 5
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 6
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 9
    TWICEがデビュー10周年 新作で再認識する揺るぎない…
  • 10
    「認知のゆがみ」とは何なのか...あなたはどのタイプ…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中