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国境紛争

トランプが自賛する和平仲介は不完全...南カフカスで対立が再燃しかねない

New Era in the Caucasus

2025年9月2日(火)17時20分
ジェフリー・マンコフ(米国防大学国家戦略研究所・名誉フェロー)

2020年秋の紛争の様子

20年秋の紛争ではアルメニア系がナゴルノカラバフの一部を失った PRESS OFFICE OF ARMENIAN DEFENSE MINISTRYーPAN PHOTOーREUTERS

未解決の問題が山積み

アゼルバイジャンとアルメニアの軍事衝突が続いたため、南カフカスの通商・交通網はズタズタに寸断された。結果、この地域の戦略的な価値は低下し、そこに付け込んでロシアがこの地域を支配してきた。

ロシアの介入で紛争の激化は防げたが、ロシアは永続的な解決を妨害した。和平が実現しなければ、アゼルバイジャンとアルメニアは自国の将来像を描けない。


両国の対立を招いた大きな要因は、アゼルバイジャン領内のアルメニア系住民が多く住む地域であるナゴルノカラバフの帰属問題だ。1990年代からアルメニア系住民がこの地域を実効支配していたが、20年の第2次ナゴルノカラバフ紛争でアゼルバイジャンがその一部を奪還。さらに23年9月の軍事作戦で残りの地域も支配下に置いた。これによりナゴルノカラバフの帰属ではアゼルバイジャンが圧倒的に有利な立場になった。

パシニャンは賢明にも敗北を認めた。アゼルバイジャンがナゴルノカラバフ全域を掌握し、アルメニア系住民の大半がこの地域から避難した以上、大幅な譲歩もやむを得ないと判断したのだろう。

一方、アゼルバイジャンはすぐには交渉に応じなかった。「戦勝国」の余裕を見せつけ最大限の要求を突き付けようとしたのかもしれない。

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