最新記事
中朝関係

まるで「文化爆弾」...中国が北朝鮮の「支配」を狙い展開する「中国版ソフトパワー外交」の実態

China’s Cultural Offensive

2025年7月23日(水)18時00分
サンヨン・リー(デイリーNK分析調査部長)、ロバート・ラウラー(同英語版編集長)
中朝国境の鴨緑江にかかる橋

中朝国境の鴨緑江にかかる橋。遼寧省の丹東市と北朝鮮の新義州市を結んでいる Shota Tokuda-shutterstock

<トランプは北朝鮮の人権状況改善活動の支援を停止するとみられ、その空白に中国が入り込もうとしている>

米政府が北朝鮮の民主化を目指す情報活動を後退させるなか、中国がこれを戦略的な好機とみてアメリカが残した空白を埋めようとしている。

中国の狙いは北朝鮮社会に「中国の特色のある社会主義」と中国の文化を浸透させ、北朝鮮の人心をつかむこと。そのために編み出したのが大量のコンテンツ提供から教育や研修、経済統合まで多岐にわたる洗練されたアプローチだ。


この戦略の核心を成すのは、2023年末から24年初めに策定された内密のイニシアチブ「相互文化的発展・協力プログラム」である。中国東北部の3省(遼寧、吉林、黒竜江)が率先して進めるこの取り組みは、ただの文化交流の域をはるかに超えている。

北朝鮮情報を専門とする韓国のオンライン紙「デイリーNK」が複数の情報筋から聞いた話によると、中国は北朝鮮の人々に親中感情を抱かせ、中国文化にどっぷり浸からせて、さらに強力に自国の影響下に置こうとしているようだ。

このプログラムは、中国共産党遼寧省委員会宣伝部の代表団による北朝鮮訪問で正式に始動した。表向きは「文化交流」をうたうが、実際には北朝鮮に民衆レベルの親中感情を根付かせる中国版ソフトパワー外交にほかならないと、情報筋の1人は言う。「文化ほど重要な支配手段はないと中国当局は考えている」

こうした信念に基づき、一般市民、若年層、地方官僚、外国生活の経験者、国境地帯の住民など多様な層を対象とした包括的な戦略が展開されている。中国在住の北朝鮮の留学生や出稼ぎ労働者、研修生、外交官とその家族なども対象となる。

ビジネス
暮らしの安全・安心は、事件になる前に守る時代へ。...JCBと連携し、新たな防犯インフラを築く「ヴァンガードスミス」の挑戦。
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米中閣僚貿易協議で「枠組み」到達とベセント氏、首脳

ワールド

トランプ氏がアジア歴訪開始、タイ・カンボジア和平調

ワールド

中国で「台湾光復」記念式典、共産党幹部が統一訴え

ビジネス

注目企業の決算やFOMCなど材料目白押し=今週の米
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した国は?
  • 3
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水の支配」の日本で起こっていること
  • 4
    「信じられない...」レストランで泣いている女性の元…
  • 5
    メーガン妃の「お尻」に手を伸ばすヘンリー王子、注…
  • 6
    1700年続く発酵の知恵...秋バテに効く「あの飲み物」…
  • 7
    「平均47秒」ヒトの集中力は過去20年で半減以下にな…
  • 8
    【テイラー・スウィフト】薄着なのに...黒タンクトッ…
  • 9
    シンガポール、南シナ海の防衛強化へ自国建造の多任…
  • 10
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 4
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 5
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 6
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 7
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 8
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 9
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 10
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 9
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中