3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が知らないアメリカの死刑、リアルな一部始終
INSIDE THE EXECUTION ROOM
立会室のスピーカーから、その最後の言葉が流れた。タンジは感情のこもらない声でアコスタとホルダーの遺族に謝罪し、キリストの言葉で締めくくった。「父よ、彼らをお許しください。彼らは何をしているのか、自分では分からないのです」
立会室に目立った反応を見せる者はいなかった。タンジが最後の言葉を残すかどうかさえ、刑務官に促されて彼が話し始めるまで誰も知らなかった。
続いて、タンジに薬物を投与する死刑執行人が入室した。フロリダ州の薬殺刑には3種の薬が使われる。麻酔薬のエトミデートと体を麻痺させるロクロニウム臭化物が注射され、最後に酢酸カリウムが心停止を誘発する。州法により、執行は一般市民が行う。執行人には150ドルの報酬が支払われ、身元は秘匿される。
身長187センチ、体重が170キロを超えるタンジを、弁護士は法廷文書で「病的な肥満」と表現した。座骨神経痛の持病があり、肥満のせいで麻酔薬が完全に効かない可能性があるため「不要な苦痛」にさいなまれる危険は「非常に高い」と弁護士は主張し、刑の執行停止を求めていた。
ほぼ全身をシーツで覆われているので、立会室からは正確な体形が分からないが、タンジが大柄な男であるのは間違いない。
最初の薬物が注射されてから約3分後、執行室で3人の職員が見守るなかでタンジの胸が大きく上下し始めた。意識を失ったことを刑務官が確認するまで、激しい動悸は続いた。タンジを見下ろし大声で話しかけるというのが意識の確認方法で、その声が立会室の静寂を切り裂いた。