「破綻国家」ミャンマーを襲った2つの災害が、軍政を終わらせる可能性あり?...政治を揺さぶる「天災の力」

Double Disaster in Myanmar

2025年4月8日(火)14時20分
ルーク・ハント(ジャーナリスト)

天災が政治を揺さぶる

軍の統治能力の欠如は、今年12月に予定されている総選挙に向けた国勢調査でも明らかになった。辛うじて調査が実施できたのは国土の半分で、グリーニングによれば、有権者名簿を作成できたのは全330郡区のうち半分以下の145郡区だった。

重要なのは、世界の歴史で、壊滅的な自然災害が政治に大きな影響を与えたケースは少なくないことだ。


1976年に中国北部で発生した唐山地震もそうだった。当時の中国は文化大革命の真っただ中で、行政がまともに機能しておらず、救援活動が遅れ、被害状況の把握や発表も遅れた。それが1カ月半後の毛沢東の死後の、大きな政治改革につながった。

2004年にインドネシアのスマトラ島沖で起きた地震・津波は、同島北部アチェで長年続いた分離独立運動の終結を加速させた。

08年にミャンマーを襲った巨大サイクロン「ナルギス」は死者10万人超えの大惨事となったが、軍政の対応が鈍く、それに対する大衆の怒りが、その後の政治改革と15年の競争的総選挙によるアウンサンスーチーの勝利につながった。

ただ今回、軍政は粘りそうだとグリーニングらは言う。民主派勢力NUGの楽観派でさえ、軍政の崩壊までには1年以上の激しい戦闘が必要だと予想する。

「初期の援助が入ってきたら、政府は救援努力をやめるだろう」と、米戦略国際問題研究所(CSIS)のマイケル・マーティン非常勤研究員は語る。「地震後の混乱を利用して、国軍はEAOとPDFへの空爆を増やし、緊急対応措置を制限するだろう」

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

トランプ氏、FRB次期議長の承認に自信 民主党の支

ワールド

エプスタイン文書追加公開、ラトニック・ウォーシュ両

ワールド

再送-米ミネソタ州での移民取り締まり、停止申し立て

ワールド

移民取り締まり抗議デモ、米連邦政府は原則不介入へ=
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市 vs 中国
特集:高市 vs 中国
2026年2月 3日号(1/27発売)

台湾発言に手を緩めない習近平と静観のトランプ。激動の東アジアを生き抜く日本の戦略とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から脱却する道筋
  • 2
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「副産物」で建設業界のあの問題を解決
  • 3
    関節が弱ると人生も鈍る...健康長寿は「自重筋トレ」から生まれる
  • 4
    世界初、太陽光だけで走る完全自己充電バイク...イタ…
  • 5
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 6
    「着てない妻」をSNSに...ベッカム長男の豪遊投稿に…
  • 7
    日本はすでに世界第4位の移民受け入れ国...実は開放…
  • 8
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    日本経済を中国市場から切り離すべきなのか
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 3
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界でも過去最大規模
  • 4
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
  • 5
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化は…
  • 6
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに..…
  • 7
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 8
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から…
  • 9
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大…
  • 10
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中