トランプに捨てられ現実を直視...ロシアの脅威を前に「嘆かわしいほど怠慢だった」と反省する欧州は「手遅れ」なのか

DEFENDING EUROPE

2025年4月4日(金)19時58分
エリー・クック(安全保障・防衛担当)、マシュー・トステビン(シニアエディター)
NATO即応部隊の演習に参加するルーマニア兵

2月17日、スムルダンで行われたNATO即応部隊の演習に米軍は不参加(写真はルーマニア兵) ANDREI PUNGOVSCHI/GETTY IMAGES

<アメリカから「独り立ち」を迫られるNATO。危機感の格差や資金と兵士の不足で再軍備は前途多難とみられるなか、ヨーロッパが取るべき道は──>

ウクライナとの国境から数キロの位置にあるルーマニアの草原で2025年2月、演習中のNATO軍を襲った厳しい冷え込みは、冬の寒さだけではなかった。NATOにとって今年最大の軍事演習に、アメリカ軍が参加しなかったのだ。

不参加はあらかじめ決まっていたのかもしれない。しかしトランプ米政権がヨーロッパとアメリカの関係を書き換えるなか、ウクライナとの国境地帯でNATOが単独で行う軍事演習は新たな意味合いを帯びる。


ルーマニア南東部のスムルダンなど数カ所で行われた「ステッドファスト・ダート演習」の目的は、イギリス主導の多国籍部隊が危機対応のシミュレーションをすることだった。戦闘機は模擬ターゲットを攻撃し、戦車は実弾を発射し、兵士はいてついた塹壕を匍匐前進した。

だがトランプ政権の姿勢の変化はその防衛体制に重大な疑問を投げかけ、ヨーロッパを震撼させている。第2次大戦後、仮想敵国ロシアの脅威からヨーロッパを守ってきたのは主にアメリカだ。アメリカの後ろ盾を失った状態で実際に攻撃を受けたら、ヨーロッパはどうなるのか。

冷戦が終結すると、ヨーロッパ各国は防衛費を削減した。高水準の社会福祉を維持できたのは、そのおかげだった。一方でアメリカとは防衛力で大きな差がつき、ヨーロッパはアメリカへの依存度を高めた。近年、米政府にとってこの状態は受け入れ難いものになっている。

ヨーロッパの当局者は現実を直視し、自分たちが嘆かわしいまでに怠慢だったことを認めている。

東京アメリカンクラブ
一夜だけ、会員制クラブの扉が開いた──東京アメリカンクラブ「バンケットショーケース」で出会う、理想のパーティー
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

存立危機事態巡る高市首相発言、従来の政府見解維持=

ビジネス

ECBの政策「良好な状態」=オランダ・アイルランド

ビジネス

米個人所得、年末商戦前にインフレが伸びを圧迫=調査

ビジネス

オランダ中銀総裁、EU予算の重点見直し提言 未来の
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネディの孫」の出馬にSNS熱狂、「顔以外も完璧」との声
  • 3
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後悔しない人生後半のマネープラン
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 6
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 9
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 10
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 3
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 6
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中