アサドが消えても混乱続く...シリア国民が考える、復興に必要なもの

THE AFTERMATH OF A TRAGEDY

2025年3月21日(金)18時50分
伊藤めぐみ(ジャーナリスト)

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アサド政権時代に政府軍の攻撃を受けたダマスカス郊外の街 MEGUMI ITO

「今もアサドが好き」と言う人

しかしながら、この宗教指導者の理解によると、HTSにも本部の指示に従う者と、コントロールの利かない「分派」、あるいはHTSの名前を語った偽者が存在し、後者が主に問題を起こしているようだった。

HTSは北西部のイドリブ県という小さな地域のみを統治していたが、今は広大なシリア全土を統治しなければならず、それは簡単なことではない。実際に、カルダハにあるアサド一族の別邸は窃盗に遭って空っぽになっており、犯人は分からないが近隣で殺人も起きていた。


それでも、HTSとアラウィ派の地元有力者がコミュニケーションを取り、問題解決を模索しているのは特筆してよい点だ。暫定政権との新たな関係を模索する人もいるのだ。

一方で、「私は今もアサド大統領が好き」と明言するアラウィ派の人々もいる。

この数日前に、ダマスカスにあるアサドの邸宅からアサドの下着姿の写真が見つかり、報道されていた。その時を振り返って雑貨店の30代くらいの女性はこう言った。

「とても嫌な気持ちになった。どうであったとしても彼は大統領だった。そんな扱いをすべきではない」

彼女は見るからに貧しく、政権から恩恵を受けていたようには見えない。それでもアサドを支持するのは、「この町の出身で大統領だから」という。理屈ではないのだ。地元出身の政治家やスポーツ選手が好かれるように、無条件に支持してしまうのだろう。

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