最新記事
サイバー攻撃

金正恩を激怒させた映画とは?...「激おこ」独裁者たちによるサイバー覇権戦争

2025年3月14日(金)08時30分
ジェイコブ・ヘルバーグ (パランティア・テクノロジーズ社CEO上級政策顧問)
金正恩

SHAMIL ZHUMATOV via Reuters Connect

<世界規模のサイバー攻撃は、独裁者の嫌いな映画の製作に起因していた...>

サイバーセキュリティの専門家として2020年までグーグル社で対偽情報・外国介入のポリシー策定を主導し、2025年発足のトランプ政権で経済成長・エネルギー・環境担当の国務次官に指名された著者が呼びかける、新たな「テクノロジー冷戦」への警告。

アメリカ外交の今後を占うための必読書サイバー覇権戦争──ソフトとハード、二つの戦線(作品社)より第1章「グレー戦争の起源」を一部抜粋。

【動画】金正恩が激怒した映画『ザ・インタビュー』 を見る


 
◇ ◇ ◇

21世紀のウォーターゲート事件

ロシアや中国がネット上で自己主張を強めている間にも、別の独裁者たちが行動を起こしていた。2010年、スタックネットと呼ばれる高度なワームが、イランの遠心分離機を1000基程度破壊し、イランの核開発計画を後退させた。

このマルウェア攻撃は、アメリカとイスラエルによって実施されたものであると広く知られている。これに対抗し、イランの宗教指導者たちはサイバー作戦を強化し始めた。

2012年夏には、サウジアラムコ石油会社に対するイランのサイバー攻撃により、3万5000台のハードディスク・ドライブが損壊し、同社は5万台のコンピュータの買い替えを余儀なくされた。このとき、ハードディスクの世界価格が半年間にわたって高騰した。

その数カ月後、イランは「アバビル作戦」を開始し、バンク・オブ・アメリカ、JPモルガン・チェース、その他の金融機関に対して破壊的ではないものの注意を引くのに十分な一連の攻撃を実施した。

翌年、カジノの大富豪で保守派の大口寄贈者(メガ・ドナー)であるシェルドン・アデルソン(Sheldon Adelson)は、イランの核開発に対する警告として、イランの砂漠の一角を核攻撃すべきだと公に提案した。

これに対し、イランの最高指導者ハメネイ師(Ayatollah Ali Khamenei)はアデルソンに「強烈な平手打ちを受けるべきだ」と反論した。その平手打ちは、2014年初めにアデルソンのカジノ「サンズ」のネットワークに深刻な被害を与えるサイバー攻撃という形でもたらされた。

この攻撃により、ラスベガスのコンピュータの75パーセントが破壊され、従業員の機密データが流出し、アデルソンのビジネスに約4000万ドルの損害を与えた。これはアメリカ企業を標的とした国民国家による最初の破壊的な攻撃と考えられている。

編集部よりお知らせ
ニュースの「その先」を、あなたに...ニューズウィーク日本版、noteで定期購読を開始
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

FRB、0.25%の利下げ決定 昨年12月以来6会

ビジネス

FRB独立性侵害なら「深刻な影響」、独連銀総裁が警

ワールド

核問題巡り平行線、イランと欧州3カ国が外相協議

ビジネス

ユーチューブ、メディア収益でディズニー超えへ AI
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 3
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 4
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 6
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 7
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 8
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 9
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 10
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中