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荒川河畔の「原住民」(24)

7回の自殺未遂を経験しながら、若者の自殺を止めたホームレスの死生観

2025年3月5日(水)16時30分
文・写真:趙海成

医療費の問題ではない。なぜなら、生活保護を申請することが可能だからだ。

では心配の原因は何かというと、それは病名の確定後に手術が必要になることを憂えているのだろう。

自分がどんな病気になっても手術を受けないと言った征一郎さんは、人の死には「定数」(中国語で「定められた宿命」の意味に近い)があると信じている。つまり「生き残るべきものは死なず、死ぬべきものは生き残らない」と確信していて、医者のメスに頼って延長された命は、多くの苦しみを受けるだけだと思い込んでいる。

ただし、征一郎さんは他人が手術や治療を受けることには反対しない。人によって状況や宿命が異なるからだという。

荒川河川敷のホームレス

征一郎さんはわずか10分で「生と死」の詩を書いた

人間の「生と死」について、10分たらずで詩を完成

征一郎さんが歌手の前川真悟さん(かりゆし58)と共作した歌「かわがないてるよ」は、征一郎さんがたった20分で歌詞を書いたという(詳しくは第21話:「ホームレスが『かりゆし58』前川真悟さんと作った名曲『かわがないてるよ』を知っているか」参照)。

彼の歌詞を書くスピードを確かめたくて、その日彼と話し合った「生と死」をテーマに、その場で短い詩を書いてもらった。

彼は、「そういう内容を書くのはあまり得意ではない。書けないこともないけれど......」と言った。そして紙とペンを渡すと、10分もしないうちにすらすらと書いて、私の手に戻した。

征一郎さんが書いた詩を、本文の締めくくりとしたい。

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