DOGEの天下...「皇帝」マスクが6兆ドル決済システムを牛耳り、米政府をぶった切る

MUSK’S POWER GRAB

2025年2月28日(金)16時47分
ダーリア・リスウィック(司法ジャーナリスト)、マーク・ジョセフ・スターン(スレート誌司法担当)

憲法上の議会権限も無視

こうしてマスクとその仲間たちは国民への給付金や出先機関の経費、請負企業への支払いを止める権限を手にした。

気に入らない組織への支払いは止めると、マスクは公言している。議会で予算が承認されている事業でも、トランプ政権の方針に合致しないとマスクが判断すれば資金の拠出を止めるという。だが合衆国憲法は議会に歳出権を委ね、大統領には議会の決定を「忠実に執行」するよう命じている。

この基本原則を無視し、マスクは現在、政府との契約に依存する団体への資金援助を止めているが、その多くは彼自身の被害妄想と偽情報に基づいている。例えばルーテル教会系の援助団体には、政府から「違法な支払い」を受けていると難癖をつけ、資金援助を止めると通告した。

しかしこれらの団体に対する政府の助成は完全に合法で、難民の再定住や国内養子縁組の促進などの活動に使われている。違法なのは、議会が定めたプロセスを経て支給される助成金を止めたマスクのほうだ。


国民に選ばれてもいない1人の男が何兆ドルもの公的資金の財布を握り、気に入らない相手には金を出さないと脅している。こういう男を、私たちは何と呼べばいいのか?

マスクが目指すのは、あらゆる人道支援を止めること。偽情報をばらまいて弱者切り捨ての「聖戦」を正当化することだ。2月の初めには米国際開発庁(USAID)の閉鎖を宣言した。

1961年に民主党ジョン・F・ケネディの政権下で生まれたUSAIDは、世界各地でHIV/エイズ対策や妊産婦の健康、飢餓救済、教育振興、民主主義の防衛などに巨費を投じ、アメリカの非軍事的な国際貢献の顔となってきた。

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