最新記事
ロシア政治

スパイを国民のヒーローに...プーチンの巧妙な「心理作戦」の真相

GONZO INTELLIGENCE

2025年1月16日(木)09時41分
ブレンダン・コール(本誌記者)

newsweekjp20250115045513-7e1b8391428d7bcff99220f29e49e4df44ad7fce.jpg

ロシアの元工作員を殺害した容疑で英警察に追われている実業家のルゴボイ(右)も国会議員に MIKHAIL SVETLOV/GETTY IMAGES

いい例が、昨年12月にFBIが任意の事情聴取における虚偽供述の容疑で逮捕したニューヨーク在住でロシア国籍の女性ノマ・ザルビナだ。

彼女は米国内で活動する反プーチン派の集会に「専門家」として頻繁に顔を出し、ロシア連邦の解体とシベリア独立を求める「シベリア合衆国」を支持する発言をSNSで繰り返していたインフルエンサーだが、それは仮の姿で、実は数年前からロシアの連邦保安局(FSB)の指示で動いていたとされる。

あるいはマリア・ブティナの場合。彼女は米共和党支持団体の大会などに出席して有力政治家と接触していたが、2018年に正規の登録なしで外国政府の代理人(つまりスパイ)として活動していた罪で有罪判決を受けた。

しかしスパイ交換でロシアに戻り、今は晴れて国会議員となっている。2006年にロンドンでロシアの元工作員アレクサンドル・リトビネンコを殺害した容疑で英警察に追われている実業家のアンドレイ・ルゴボイも、今は国会議員だ。


前出のラドチェンコによれば、外国で捕まってスパイ交換で祖国に戻ったスパイが華々しく脚光を浴びることなど、ソ連時代には考えられなかった。しかし「今のロシア国民の目には、元スパイという肩書が立派な資産と映るらしい」とラドチェンコは言う。

「任務を果たせなかったスパイも、国に戻ればプロパガンダの片棒を担がされ、運がよければ豪勢な暮らしもできる。そこがソ連時代とは決定的に違う」

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ネットフリックス、ワーナー資産買収で合意 720億

ビジネス

アップル、新たなサイバー脅威を警告 84カ国のユー

ワールド

イスラエル内閣、26年度予算案承認 国防費は紛争前

ワールド

EU、Xに1.4億ドル制裁金 デジタル法違反
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 2
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させられる「イスラエルの良心」と「世界で最も倫理的な軍隊」への憂い
  • 3
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 4
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 5
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開…
  • 6
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 7
    左手にゴルフクラブを握ったまま、茂みに向かって...…
  • 8
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 9
    主食は「放射能」...チェルノブイリ原発事故現場の立…
  • 10
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 4
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 5
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 6
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 7
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 8
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 9
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 10
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中