尹錫悦は「何を間違えた」のか?...お粗末すぎた大統領の自作自演クーデター計画を解説

OUR DEMOCRACY IS RESILIENT

2024年12月10日(火)13時51分
ネーサン・パク(米「責任ある外交に関するクインシー研究所」研究員)

議事堂への突入を試みる兵士たち

議事堂への突入を試みる兵士たちを抗議の市民が押し返した CHUNG SUNG-JUN/GETTY IMAGES

その戒厳令が急に現実となった。12月3日の午後10時23分、尹は予告なしの記者会見を開いた。6分間にわたって声明を読み上げ、「非常戒厳」を宣布すると表明した。

理由はリベラル派の野党「共に民主党」が政権幹部に対して22件もの弾劾訴追案を発議し、来年度予算を大幅に削減すると脅し、国会を「自由民主主義体制を破壊する怪物」に変えたというものだった。


尹は政敵を「親北朝鮮の反国家勢力」と決め付けた。それは韓国の過去の独裁者たちが自らを正当化するために使ったのと同じ表現だった。

1時間後には朴安洙(パク・アンス)陸軍参謀総長が戒厳司令官に任命されていた。戒厳司令部は国会と地方議会に一切の政治活動を禁じ、全ての言論と出版を統制し、市民の集会を禁じると命じた。首都ソウル市内には装甲車やヘリコプターが出現した。

過去の悪夢がよみがえった

戒厳宣布を伝える国内のニュースキャスターたちは、見るからに身を震わせていた。多くの国民同様、戒厳令下の日々を体験し、知っていたからだ。

韓国で最後に戒厳令が敷かれたのは1979年10月、独裁者・朴正煕(パク・チョンヒ)が殺害されたときだ。その後に全斗煥が権力を掌握したが、戒厳令は1981年1月まで維持された。その間に南西部の光州で戒厳軍の空挺部隊が少なくとも数百、あるいは数千人のデモ隊を虐殺した。

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