最新記事
イスラエル

プーチンと並び立つ「悪」ネタニヤフは、「除け者国家」イスラエルを国連演説で救えるか

Benjamin Netanyahu Set For Another U.N. Showdown

2024年9月26日(木)18時15分
マイケル・キャロル

しかし世界がイスラエルの軍事作戦にイラ立ちを募らせる今、ネタニヤフの主張がどれほど共感を呼ぶかは大いに疑問だ。

「ネタニヤフは国連演説で歴史をつくってきたと本気で自負しているが、それは勘違いだ」と、元ニューヨーク駐在イスラエル総領事のアロン・ピンカスは手厳しい。「イスラエルは今や国際社会から疎外されたパーリア(除け者)国家になりつつあり、ネタニヤフは血に飢えた好戦的指導者と見なされている」

訪米したネタニヤフは抗議デモに出迎えられたはずだ。特にガザの人道状況を見兼ねて立ち上がったニューヨークのコロンビア大学の学生たちなどは黙ってはいないだろう。

通算でイスラエル史上最も長期にわたり首相を務めるネタニヤフは、これまでもパレスチナ問題に対する強硬姿勢で多くの同盟国の信頼を失い、国際社会の批判を浴びてきた。ガザを実効支配するイスラム組織ハマスに対する度を超えた報復攻撃で、その評判はさらに悪化している。

ガザ紛争の発端は、1200人余りのイスラエル人が殺され、推定250人が人質に取られた昨年10月7日のハマスによる奇襲攻撃だが、ガザ保健当局によると、これまでに亡くなったパレスチナ人は4万1000人を超える。

ガザの人道危機は深刻化の一途をたどり、ガザ地区の住民230万人余りの多くが避難を強いられている。これには世界中から抗議の声が上がっているが、一方で今もイスラエル人の人質が何十人もガザで拘束されているとみられ、イスラエル国内でも不満が噴出している。

世界は雄弁に惑わされず

当初、アメリカなどの同盟国は、イスラエルのハマスに対する報復攻撃を支持していた。だが民間人の犠牲者が増えるにつれ、バイデン政権がイスラエルへの爆弾の輸送を一時停止し、英政府も国際法に違反する攻撃に使われるリスクがあるとして、イスラエルへの武器輸出を一部停止するなど、同盟国の支持も揺らぎ始めている。

さらに事態を複雑にしているのは、ICCの逮捕状発布の可能性だ。ネタニヤフの政治家としての野望には、戦争犯罪の容疑が暗い影を落としている。国連総会の舞台裏で繰り広げられる外交で、ネタニヤフと接触する外国首脳はまずいないだろうと、元イスラエル外務省高官のリエルは言う。その意味でニューヨーク訪問は無駄足になりそうだ。

「ネタニヤフは弁が立つのは確かだ」と、リエルは認める。「だが世界は彼のレトリックにうんざりし始めていて、それを真に受ける人士はどんどん減っている」

この記事にはAP通信の報道が含まれています。

ニューズウィーク日本版 非婚化する世界
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年6月17日号(6月10日発売)は「非婚化する世界」特集。非婚化と少子化の波がアメリカやヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米、世界のエネルギー供給への影響監視 イスラエル・

ワールド

イスラエル、イランの攻撃で1人死亡 テヘランでも爆

ワールド

イスラエル、イランの攻撃で1人死亡 テヘランでも爆

ビジネス

日鉄、米政府と国家安全保障協定を締結=USスチール
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 2
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生きる力」が生んだ「現代医学の奇跡」とは?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    【動画あり】242人を乗せたエア・インディア機が離陸…
  • 5
    ゴミ、糞便、病原菌、死体、犯罪組織...米政権の「密…
  • 6
    メーガン妃がリリベット王女との「2ショット写真」を…
  • 7
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未…
  • 8
    「結婚は人生の終着点」...欧米にも広がる非婚化の波…
  • 9
    先進国なのに「出生率2.84」の衝撃...イスラエルだけ…
  • 10
    世界一人口が増えているのはイスラム教徒――若さと出…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラドールに涙
  • 3
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 4
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタ…
  • 5
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 6
    ひとりで浴槽に...雷を怖れたハスキーが選んだ「安全…
  • 7
    猫に育てられたピットブルが「完全に猫化」...ネット…
  • 8
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 9
    プールサイドで食事中の女性の背後...忍び寄る「恐ろ…
  • 10
    救いがたいほど「時代錯誤」なロマンス映画...フロー…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中