最新記事
ウクライナ情勢

プーチンに変化、和平交渉に「前向きな姿勢」を示す...東シベリアの中高生に語る

Putin shifts stance on Ukraine peace talks amid Kursk incursion

2024年9月3日(火)14時15分
バラル・ラーマン
プーチン大統領

2024年9月2日、ロシア・トゥバ共和国の首都クズルの学校を訪問し、「重要なことを話す」というテーマで生徒たちと語り合ったプーチン大統領 Sputnik/Kristina Kormilitsyna/Pool via REUTERS

<「無法者」への対処は必要だが、今後、和平交渉の「意欲」が生まれるだろうと発言>

ウクライナ軍がロシア西部クルスク州への越境攻撃を続けるなか、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の和平交渉に対する姿勢に変化が生じたようだ。

プーチンは9月2日に東シベリアのトゥバにある学校を訪問した際に、生徒たちを前に、今後和平交渉に入る「意欲」が生まれてくるだろうと示唆し、次のように述べた。

「この挑発[ウクライナによる越境攻撃]も失敗に終わるだろうと確信している。そして言葉だけではなく実際に行動によって和平交渉に進み、これらの問題を平和的な手段で解決しようとする意欲が生まれるだろう。我々はこれ[平和的な解決]を決して断念していなかった。だがもちろん、ロシア連邦の領土に侵入した無法者たちには対処しなければならない」

【関連動画】生徒の背筋はピン...東シベリアのトゥヴァ共和国の学校で講演するプーチン大統領 を見る


 

和平交渉をめぐるプーチンの最近の発言は、ウクライナ軍がクルスク州への越境攻撃を開始した当初とは大きく変わっている。

プーチンは6月には、ウクライナがドネツク、ルハンスク、ザポリージャとヘルソン[ロシアが一方的に併合したウクライナ東部の4つの州]から軍を撤退させ、NATOへの加盟方針を撤回しない限り、ロシアは和平交渉に応じないと主張していた。

越境攻撃がウクライナにもたらす「交渉力」

ウクライナのシンクタンク「防衛戦略センター」の安全保障問題担当プログラムディレクターであるビクトリア・ウドビチェンコは本誌に対して、プーチンは「ロシア勝利の可能性が低い」から和平交渉を後押ししているのだと指摘し、次のように述べた。

「ロシアは、自分たちが占領している全ての領土を保持すること目的とした『和平交渉』を後押しし始めている。その一方でロシアは現在も、エネルギー施設や民間インフラ、住宅用建物を攻撃してウクライナを脅かし続けている」

欧州政策分析センター(CEPA)の研究員であるエリナ・ベケトワは本誌に対して、クルスクでの作戦はウクライナが「交渉力のある立場で話し合いに臨むことができる」ことを示していると述べた。

「ウクライナに対する本格侵攻を開始して以降、プーチンはウクライナについて、自分たちの領土を守るのをやめて自国の領土から撤退せざるを得なかったと皮肉な発言ばかりしてきた」とベケトワは指摘し、さらにこう続けた。

「ウクライナが今後さらに作戦を成功させて進軍を果たしていくにつれ、ロシアは『口先ではなく行動によって』和平交渉に向かうようになるだろう」

ロシア通信(RIA)によれば、プーチンは2日にトゥバを訪問した際に、クルスク州におけるウクライナ軍の「挑発行為」は、ウクライナ東部ドネツク州でのロシア軍の進軍を阻止してはいないと主張。ロシア軍はクルスク州において「平方キロメートル単位で」領土を奪還しており、ウクライナ軍による越境攻撃は「対処がなされる」だろうと述べた。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

中国レアアース規制の影響、現時点では限定的と予想=

ビジネス

国立競技場の呼称「MUFGスタジアム」に 来年1月

ワールド

EU、ガザ復興への影響力最大化へ和平理事会参加を検

ワールド

マクロスコープ:政界混乱示す「総総分離」案、専門家
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道されない、被害の状況と実態
  • 2
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ海で「中国J-16」 vs 「ステルス機」
  • 3
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 4
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に…
  • 5
    【クイズ】アメリカで最も「死亡者」が多く、「給与…
  • 6
    「欧州最大の企業」がデンマークで生まれたワケ...奇…
  • 7
    イーロン・マスク、新構想「Macrohard」でマイクロソ…
  • 8
    「中国に待ち伏せされた!」レアアース規制にトラン…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「中国のビットコイン女王」が英国で有罪...押収され…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 3
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 4
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 5
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 6
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 7
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 8
    ウクライナの英雄、ロシアの難敵──アゾフ旅団はなぜ…
  • 9
    「中国のビットコイン女王」が英国で有罪...押収され…
  • 10
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中