最新記事
ウクライナ戦争

多数のロシア兵が戦わずして降伏...「プーチン神話」になぜ亀裂が入ったのか?

Dramatic Turnaround

2024年8月20日(火)14時27分
カール・ビルト(ヨーロッパ外交評議会共同議長、元スウェーデン首相・外相)

だが問題はプーチンに残された手札の数だ。侵攻部隊を駆逐したくても、自国領土に核爆弾を落とすわけにはいかない。ロシアがミサイルやドローン(無人機)でウクライナの都市を猛攻しても、ウクライナ人の祖国防衛の決意は揺らぎそうにない。

これまでおおむね徴兵を免れてきたモスクワとサンクトペテルブルクの市民も含め、さらに広範な動員令を出せば、社会と経済の安定を脅かすことになる。北朝鮮とイランのミサイルやドローンの備蓄は無尽蔵ではない。ほかに選択肢はあるだろうか。中国に支援拡大を頼むか?


いずれにせよプーチンに残された選択肢は限られている。

戦争を早期に終結させる道筋が明らかになり、現実味を増してきた今、ウクライナに味方する国々はあらゆる方法で支援を拡大するべきだ。

できることはたくさんある。財政援助の拡大、西側の一部兵器の使用規制の解除、F16の操縦士の訓練体制の強化、中国、インド、トルコ経由などの取引を監視し対ロ制裁の抜け穴を塞ぐこと、ウクライナへの西側の弾薬供給(徐々に増えている)の迅速化......などだ。

もちろん、戦争の行方は戦場で決まる。だがプロイセンの軍事理論家、カール・フォン・クラウゼヴィッツが論じたように、戦争は究極的には政治的意思の戦いだ。

プーチンは今でもこの戦争に勝つしかないと思い定めているようだが、ウクライナの奇襲作戦が成功した今、多くの人が彼の信念を疑い始めている。

いま求められているのは、この流れを加速させること。より望ましい形で戦争を早期に終結させるには、まさに今が正念場だ。

Foreign Policy logo From Foreign Policy Magazine

ニューズウィーク日本版 ISSUES 2026
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年12月30日/2026年1月6号(12月23日発売)は「ISSUES 2026」特集。トランプの黄昏/中国AIに限界/米なきアジア安全保障/核使用の現実味/米ドルの賞味期限/WHO’S NEXT…2026年の世界を読む恒例の人気特集です

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

SOMPO、農業総合研究所にTOB 1株767円で

ワールド

中国、米が国防政策を歪曲と批判 対インド関係巡り

ワールド

中国、米国の台湾への武器売却を批判 「戦争の脅威加

ビジネス

11月ショッピングセンター売上高は前年比6.2%増
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 2
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足度100%の作品も、アジア作品が大躍進
  • 3
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...どこでも魚を養殖できる岡山理科大学の好適環境水
  • 4
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 5
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 8
    ゴキブリが大量発生、カニやロブスターが減少...観測…
  • 9
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 10
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 10
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 8
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中