最新記事
ロシア軍

ロシア軍戦車が公道で「走る凶器」と化す、犠牲者はロシアの哀れな一般市民

Russian Civilians Keep Getting Killed by Putin's Tanks


2024年8月1日(木)18時01分
イザベル・バンブルーゲン
5月9日の対独戦勝記念パレード、ウラジオストク

我が物顔で走行するのは戦場かパレードだけにしてほしいが(写真は5月9日の対独戦勝記念パレード、ウラジオストク)Gao Ziqian/VCG via Reuters Connect

<一般車両を運転していたある男性は、戦車の車輪の下で死んでいた。テレグラムは事故の様子をこう伝えた。 「戦車は一般車に道を譲らず、その上を走った」>

この夏、ロシア国内で軍用車両による交通事故が相次いで発生、民間人の命が奪われている。

【映像】ロシア軍戦車、民間人のクルマに砲撃 老夫婦が犠牲に

6月から7月にかけて、国内の道路でロシア軍の戦車やトラックが一般車両に衝突する事件が少なくとも4件起きた。

ロシア南部ロストフ州ノヴォシャフチンスクで、39歳の女性とその6歳の息子がロシア軍のトラックに衝突されて死亡した。この事故で他の9歳、16歳、17歳の子供3人も入院した、と地元メディアは7月31日に報じている。

ロシアの独立系調査報道サイト「ザ・インサイダー」は、車両のマークから事故を起こしたトラックがロシア東部軍管区に属していることが明らかになったと報じた。

このような事件は7月で3件目になると、ロシアの独立系メディア「モスクワ・タイムズ」は報じている。

7月24日には、ウクライナと国境を接するロシアのベルゴロド州で、ロシア軍の戦車が一般車両に衝突し、運転手が死亡した、と地元のテレグラムチャンネル「ペペル」が伝えた。

「男性は戦車の車輪の下で死亡した」と同チャンネルは報じ、「戦車は車に道を譲らず、車の上を走った」と付け加えた。

犠牲者は地元に住む73歳のコンスタンチン・ロパチンだった。目撃者によれば、戦車を操作していた兵士たちは「頭がおかしくなっているような有様」だったという。

戦場での振る舞いそのまま

ペペルによれば、同様の事件は6月初旬にも起きていた。酒に酔ったロシア軍兵士が運転する車両が民間人の車を轢き、ベルゴロド在住でトラック運転手のアンドレイ・アレクセーエフが死亡した。

「遺体の位置から判断すると、男性はおそらく車から降りようとしていたが、 間に合わなかったようだ」と同チャンネルは現場のビデオ映像から分析した。

目撃者がペペルに語ったところによると、戦車に乗っていた兵士たちは事故現場から逃げようとしたという。約3キロ近く離れたクラシボ村の近くでやっと停車した。

ウクライナの戦場でも、ロシア軍の戦車が誤って自国の部隊を轢いたという話はよく報告されている。

親ロシア政府派のテレグラムチャンネル「グレー・ゾーン」は昨年2月、戦車の下に引きずり込まれる2人の兵士や、炎に包まれた兵士が爆発直前に戦車から逃げ出す姿を映した映像を投稿した。

グレー・ゾーンは、「まさに実情を物語る」映像だ、と伝えている。「少なくとも30台の車両が破壊され、体に火が付いた戦車兵が走り回り、BMP(装甲兵員輸送車)が自軍兵士を押しつぶす――チェチェンでの戦争を描いた映画『Purgatory(煉獄)』のような光景だ」


ニューズウィーク日本版 脳寿命を延ばす20の習慣
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年10月28日号(10月21日発売)は「脳寿命を延ばす20の習慣」特集。高齢者医療専門家・和田秀樹医師が説く、脳の健康を保ち認知症を予防する日々の行動と心がけ

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら



あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

「オレオ」のモンデリーズ、新AIツールでマーケティ

ワールド

トルコ裁判所、最大野党党首解任求める訴え棄却 株式

ワールド

ユーロ圏総合PMI、10月は17カ月ぶり高水準 サ

ワールド

フランス社会党、週明けに内閣不信任案提出も 富裕層
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 2
    「ママ、ママ...」泣き叫ぶ子供たち、ウクライナの幼稚園をロシアが攻撃 「惨劇の様子」を捉えた映像が話題に
  • 3
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシアに続くのは意外な「あの国」!?
  • 4
    ハーバードで白熱する楽天の社内公用語英語化をめぐ…
  • 5
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 6
    「宇宙人の乗り物」が太陽系内に...? Xデーは10月2…
  • 7
    国立大卒業生の外資への就職、その背景にある日本の…
  • 8
    【ムカつく、落ち込む】感情に振り回されず、気楽に…
  • 9
    汚物をまき散らすトランプに『トップガン』のミュー…
  • 10
    為替は先が読みにくい?「ドル以外」に目を向けると…
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 5
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 6
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 9
    「ママ、ママ...」泣き叫ぶ子供たち、ウクライナの幼…
  • 10
    ハーバードで白熱する楽天の社内公用語英語化をめぐ…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中