最新記事
武器支援

米国務省、イスラエルに約3兆円の武器売却を承認 F15戦闘機を中心に

US Approves $20 Billion Arms Deal for Israel

2024年8月14日(水)18時18分
ナタリー・ベネガス、ジョン・ジャクソン
イスラエル軍の空爆を受けたガザのマガジ難民キャンプ

イスラエル軍の空爆を受けたガザのマガジ難民キャンプ(8月14日) REUTERS/Ramadan Abed

<イスラエルのガザへの空爆とそれに対する非難は続いているが、それでも支援はやめられないアメリカ外交の矛盾>

米国は8月13日、イスラエルに対する200億ドル(約3兆円)を超える兵器売却を承認した。

アントニー・ブリンケン米国務長官が売却を承認した、とロイター通信が報じた。この契約には、F15戦闘機と3万3000発近い戦車用砲弾が含まれるという。

AP通信によると、売却については、国務省の公式発表に先立って、米国議会に通知が行われた。売却対象となるのは、F15戦闘機を50機超、発展型中距離空対空ミサイル(AMRAAM)、120ミリの戦車用弾薬および迫撃砲弾、軍用車両などだ。

国務省は、売却に関する声明のなかで、「米国は、イスラエルの安全保障にコミットしている。強力かつ即応性のある自衛能力の開発と維持に関してイスラエルを支援することは、米国の国益にとって不可欠だ」と述べている。「今回の売却計画は、それらの目的に合致する」

しかし、これらの兵器がすぐにイスラエルに届くことはないだろう。契約の履行には数年かかるとみられ、F15戦闘機の納入開始は2029年になる見通しだと、AP通信は報じている。

現役F15の改修キットも

契約にはさらに、イスラエルが既存のF15戦闘機20数機を新しいエンジンやレーダーなどで改修するためのアップグレードキットの供給なども含まれる。200億ドルの売却総額の中で最も大きな部分は、F15戦闘機関連だ。

本誌は、国務省にメールでコメントを求めている。

イスラエル当局は、ガザでの戦争の発端となった2023年10月7日のハマスによる越境攻撃で、イスラエル側で約1200人が死亡したと推定している。また約240人が人質となり、そのうちの約半数は現在もハマスに拘束されている。イスラエルはまた、その後のガザでの地上戦で320人以上のイスラエル国防軍兵士が死亡したと明らかにしている。

一方、ガザを拠点とするパレスチナ保健省の集計によると、開戦以来、同地区では3万9600人以上が死亡、9万2000人以上が負傷している。

ジョー・バイデン米政権は、停戦を求める一方で、同盟国イスラエルを支持する姿勢を堅持している。この戦争に対する抗議活動が米国各地で広がっているにもかかわらず、だ。

しかし、ガザにおける民間人の犠牲が増えるにつれ、バイデン政権に対しては、議員と国民の両方から、イスラエルへの軍事支援を再考するよう求める圧力が高まっている。

なお、バイデン政権は2024年5月、ガザの人口密集地域で空爆が続いていることを理由に、イスラエルへの2000ポンド爆弾の輸送を一時停止することを決定した、とAP通信は報じている。
(翻訳:ガリレオ)

ニューズウィーク日本版 英語で学ぶ国際ニュース超入門
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年5月6日/13日号(4月30日発売)は「英語で学ぶ 国際ニュース超入門」特集。トランプ2.0/関税大戦争/ウクライナ和平/中国・台湾有事/北朝鮮/韓国新大統領……etc.

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米・ウクライナ、鉱物資源協定に署名 復興投資基金設

ワールド

トランプ氏「パウエル議長よりも金利を理解」、利下げ

ワールド

一部の関税合意は数週間以内、中国とは協議していない

ワールド

今年のロシア財政赤字見通し悪化、原油価格低迷で想定
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 2
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・ロマエとは「別の役割」が...専門家が驚きの発見
  • 3
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 4
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    中居正広事件は「ポジティブ」な空気が生んだ...誰も…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 10
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中