最新記事
戦場ウクライナの日本人たち

ほっとして隣を見たら「顔が半分ない死体」が...今も「戦地ウクライナ」に残る日本人たち、それぞれの物語

JAPANESE IN UKRAINE

2024年6月6日(木)17時30分
小峯 弘四郎(フォトジャーナリスト)

ウクライナの日本人・渡辺さん

渡辺さん(写真)と田所さん(次ページで紹介)はどちらも元自衛官でジョージア軍団に所属している KOSHIRO KOMINE

安定を捨てて戦場へ

開戦後、ウクライナに渡った日本人には、日本での安定した暮らしを捨てて、あえて戦地に行くことを選んだ人が多い。24年3月にザポリッジャで取材したジョージア軍団(編集部注:ジョージア人義勇兵で構成された部隊)所属の日本人義勇兵、渡辺さん(仮名)もその1人だ。

20代後半、中部地方出身で元自衛官の渡辺さんは23年11月にウクライナ入りした。自衛隊にいた時は工兵だったが、今は歩兵としてジョージア軍団に所属している。自衛隊を除隊した後は食品会社に勤め、不安もリスクもない生活を送っていた。

「訓練経験のない人がそのまま前線に送られているというニュースを見て、経験のある自分が行くことで少しでも助けになればと思いました」と、渡辺さんは言う。「自衛隊で得た知識と訓練経験が役に立つのなら、どんなリスクがあっても問題ない」

まず日本にいる時にSNSで情報収集し、2つの部隊とビデオ面談した。1つは英語力不足で断られたが、1つは参加を認められ、23年11月にウクライナへ。しかし、その部隊は健康診断で眼鏡の使用を理由に渡辺さんを不採用にした。

ボランティアをしながら情報収集をしたが、なかなか思うような情報が得られず、キーウにあるジョージア軍団の基地に直接行き、入隊を志願した。英語で交渉して自衛隊の在籍証明書を見せるととんとん拍子に話が進み、12月には北東部の前線に派遣された。

最初に前線での任務に就いた時は、それほど怖いとも思わなかった。ただ4回目ぐらいの任務で、近くにミサイルが着弾する音を聞いた時は、無意識に手が震えた。ものすごい爆発音がしてかなり揺れ、本来自分たちがいる塹壕の近くにぽっかりと1メートルくらいの穴が開いていた。

渡辺さんは家族や周囲の友達には変に心配をかけたくないので、「1年間ボランティアに行く」とだけ伝えてウクライナにやって来た。戦争が終わったら日本に帰り、自衛官の友人などに自分の経験を伝えたいと思っている。「兵士として実戦経験があるのとないのとでは、大きく違う。自分の経験を基に何が必要か、どのようなメンタリティーが求められるかを共有したい」からだ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、ABCの免許取り消し要求 エプスタイン

ビジネス

9月の機械受注(船舶・電力を除く民需)は前月比4.

ビジネス

MSとエヌビディア、アンソロピックに最大計150億

ワールド

トランプ政権の移民処遇は「極めて無礼」、ローマ教皇
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 4
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    「嘘つき」「極右」 嫌われる参政党が、それでも熱狂…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「日本人ファースト」「オーガニック右翼」というイ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中